来年の統一地方選の勝利に向け、日本共産党の志位和夫委員長は10月23日、福井市で演説しました。県政・国政・党創立100年の歴史を縦横に語る志位氏の演説に、参加者がうなずきながらじっと耳を傾け、各所で共感の拍手が湧き起こりました。
志位氏は、福井県政について、「統一地方選の最大の争点の一つは老朽原発再稼働の暴走を許していいのかです」と指摘。全国一の原発集中立地県である福井では、国と県が一体に老朽原発再稼働を強行しようとしていると述べ、「昨年4月には知事が全国で初めて、運転開始から40年を超える老朽3原発(高浜1、2号、美浜3号)の再稼働に同意しました。関西電力は美浜3号の運転を開始し、残り二つも再稼働を強行しようとしています」と告発しました。
その上で、運転期間の「原則40年」は、福島原発の事故を受けて決めたルールであり、原子炉の圧力容器は中性子が照射される期間が長くなるほどもろくなるのは物理の法則で明らかだと指摘。「福島を忘れたのか、科学を無視していいのか。再稼働は断固ノーの審判を下しましょう。そして、原発をゼロにして、再生可能エネルギーへの大転換を実現し、気候危機を打開する。希望ある未来を開く選挙にしましょう」と力強く訴えました。
「国政はどうなっているか」と問いかけた志位氏。岸田政権の深刻な行き詰まりの一方で、「政治を変えよう」という新しい国民的運動が広がっていると述べ、「日本共産党は間違った政治に正面から対決するとともに、国民のみなさんの立場に立って建設的な提案を行い政治を前に動かす、この仕事をしっかりやっています」と強調しました。
志位氏は、「統一協会と自民党との癒着がもう底なし状態です」と述べ、癒着の調査に背を向け続ける岸田文雄首相の姿勢を批判しました。
このなかで、井野俊郎防衛副大臣と統一協会との深刻な癒着関係が、「しんぶん赤旗」日曜版の取材で明らかになったことを紙面(23日号)を示しながら紹介。「この問題の大事なところは、自民党の『点検』では井野氏の名前が全くあがっていなかったことです。共産党が調査をして初めて明らかになった。自民党は自らの責任で実態を明らかにするべきです」と指摘し、政府・自民党による責任ある調査が必要だと訴えました。
志位氏は、物価高騰から暮らしと営業をどう守るかについて、「岸田政権はなぜこれだけの異常円安になっても『異次元の金融緩和』をやめられないのか。働く人の賃金が上がっていないからです」と指摘。政治の責任で本気になって賃上げを実行すべきだとして、最低賃金を1500円に引き上げるための中小企業への直接支援の抜本的強化、消費税5%への緊急減税を訴えました。
また、10月から75歳以上の医療費の窓口負担が2倍化されたことについて、「物価高騰の時に、年金は下げて、医療費は上げる。こんな血も涙もない政治はない」と批判し、負担増撤回、医療費軽減へ転換しようと力を込めました。
「平和の問題も訴えたい」として、志位氏は、軍拡・改憲の大合唱が続いていることを強く批判。「いま本当に必要なのは外交戦略です」と強調。あらゆる問題を平和的な話し合いで解決する東アジア諸国連合(ASEAN)の取り組みにヒントがあると紹介し、東アジアに平和を創出する共産党の「外交ビジョン」を力説しました。
最後に志位氏は、「党をつくって今年で100年です」と述べ、100年の党の歴史を貫く、「不屈性」「自己改革」「国民との共同」の「三つの特質」について熱弁。「この特質を次の100年にも発展させたい。その第一歩として党を大きくして、統一地方選で勝利を勝ち取りましょう」と呼びかけると、会場から大きな拍手が湧き起こりました。
志位氏は、日本共産党の、さとう正雄県議が高速増殖炉「もんじゅ」の再稼働に県議会でただ一人反対し、開発中止に追い込んだと紹介し、「老朽原発再稼働計画に、県内外から59件もの反対請願が出されたが、紹介議員になったのは37人の県議会議員の中で、さとうさんただ一人だ」と強調。「文字通り命を守る命綱の大事な議席を守り抜きましょう」と必勝を訴えました。
さとう県議と山田・鈴木福井市議が決意
県議選福井市区(定数12)で6期目を目指す、さとう県議が決意表明。「岸田政権と福井県政、県議会の異常な原発推進政治の転換へ、皆さんの不安の声を届ける私を押し上げてほしい」と訴えました。福井市議選(定数32)をたたかう山田ふみは、鈴木しょうじゅの両現職も必勝への思いを語りました。
戦争する国づくり反対!福井総がかりアクションの屋敷紘美代表があいさつに立ち、共産党を激励しました。
あわら市の男性(78)は「共産党の歴史や、党の持つ誠実さがよく伝わる演説会だった」と話していました。
憲法をめぐって維新と協力の余地があると考えているとしたら、とんでもない思い違い
立民代表の発言めぐり言及
福井市での演説会では質問コーナーが設けられ、共産党に対する疑問に志位氏が答えました。
「野党共闘に展望はあるのか」との問いに対し、志位氏は、共闘に対する激しい攻撃の中で、「野党共闘にさまざまな困難や後退が生まれているのは事実です。しかし、いまの日本の政治を変えようと思ったら共闘しかない」と訴え。その上で、「共闘を再構築する最大のカギは国民のたたかいです。野党共闘が始まった原点は2015年の安保法制反対のたたかいにありました。いま、平和・暮らし・民主主義の切実な問題で大運動を起こし、『共闘を再構築せよ』の声をどうかあげていただきたい」と呼びかけました。
また、「他の野党のみなさんにも率直に言いたい」として、「政治を変えたい」という国民の願いに応えようとすれば、日本維新の会や国民民主党のような「自民党の補完勢力」とはきっぱりたたかう姿勢が必要だと強調。立憲民主党の代表の発言にかかわって、「憲法をめぐって維新と協力の余地があると考えているとしたら、とんでもない思い違いです。維新は自民党以上の改憲の先兵になっている。こういう勢力とは正面からたたかわなければ、『政治を変えたい』という国民の願いに応えることはできません」と訴えました。
二つ目の質問は「党創立記念講演をするにあたり、どのような準備をしたか」です。
「私たちの先輩のたたかい、先輩の思いを敬意を持って未来に伝える。これが記念講演に込めた思いです」と志位氏。党内外の共産党を支えてきた人たちへの思いを語り、「その方々のたたかいを未来に伝えたい、若い人に伝えたい。その思いで準備をしました」と答えました。
さらに、志位氏は、「もう一つ、記念講演に込めた思いは、私の反省なんです」と強調しました。共産党には三つの躍進の時期があるとして、「この三つの躍進を比較すると第一の躍進は勝つべくして勝った。躍進の土台には、60年代の強く大きな党をつくる運動があった」と指摘。一方で、「第二、第三の躍進はそれぞれ重要な躍進でしたが、党の実力が伴わなかった。実力をつける仕事に成功していない。ここは反省点なのです」と述べ、「第一の躍進を準備した60年代の初心に立って、今こそ強く大きな党をつくり、日本の政治を前に進める力を持った党をつくりたい。これが記念講演に込めた一番の思いです」と訴えました。
演説会終了後、志位委員長が、オンラインで演説会を視聴した男性(28)に電話で直接入党を呼びかけました。「今日の演説会はどうでしたか」と語りかける志位氏に、男性は、最低賃金1500円の提案や日本共産党の100年の歴史に感動したと感想を語り、入党を決意しました。
(「しんぶん赤旗」2022年10月24日より転載)