晴男 東京電力福島第1原発事故から11年と7カ月たつけど、いまだにふるさとに帰れない人が福島県を中心にたくさんいるね。
秋平 原発事故で広範囲に拡散した放射線の影響などがあるね。
晴男 先日、国連で避難民の人権問題を担当しているセシリア・ヒメネス・ダマリー特別報告者が都内で記者会見した。
秋平 日本で調査をしていた。9月下旬から、政府関係者や避難者、福島の地域社会、市民団体、専門家などと面会した。
権利をどう守る
晴男 同氏は会見で「支援や援助を受ける上での強制避難や自主避難の区別は取り除くべきである」と述べたんだ。
秋平 実にまっとうな見解だけど、福島の現状をみると重要な被災者支援の提言だ。
晴男 そうなんだ。同氏は弁護士でもあるんだけど、避難者の権利をどう守っていくかに調査の焦点をあてたと説明している。
秋平 とにかく事故直後は、47万人もの人が避難したからね。
晴男 住まい、医療、生計、子どもの教育など、避難者は多くの困難に直面してきた。
秋平 報告では、とくに行政当局が自主避難と認定した避難者を中心に支援に著しい差別があったとしている。
晴男 住宅支援の多くは打ち切られて、暮らしの見通しが立ってない貧困層や高齢者、障害者にとって大きな打撃となったとしている。
秋平 支援住宅に残っている人に立ち退き訴訟まで起きているからね。
晴男 報告では、政府に移住先を問わず、住宅支援施策を再開するよう求めている。
サポートがない
秋平 避難によって、家族が離散した状況にも触れているね。
晴男 避難民の失業率の高さ、とくに女性が避難中にシングルマザーになるケースなども紹介し、こうしたことへのサポートがないことも指摘している。
秋平 原発事故の避難者の実情を国連の担当者も問題視しているんだね。
晴男 最終報告書は来年6月の国連人権理事会で公表されるけど、日本政府は報告を真摯(しんし)に受け止めて避難者支援の拡充をするべきだ。
(「しんぶん赤旗」2022年10月20日より転載)