岸田文雄政権が、「原則40年」とした原発の運転期間の法律規定の撤廃に向けて動きだしました。経済産業省は5日、原子力規制委員会の会合で法改定を検討する方針を表明し、規制委も容認しました。運転期間の原則40年は、2011年の東京電力福島第1原発事故後、原発の危険性を少しでも減らすという目的で、当時の民主党政権と自民党・公明党が合意して導入しました。甚大な被害を引き起こした福島原発事故の教訓をないがしろにし、原発の安全に関わる重要なルールを破壊することは認められません。
重大事故への反省どこへ
原子炉等規制法は12年の改定で、原発について「運転することができる期間は…40年とする」と明記しました。それまでは運転期間の上限は定めていませんでした。同時に、「1回に限り延長することができる」として、「延長する期間は、20年を超えない」と最長60年の運転も容認しました。それについても、当時の政府は「例外中の例外」としていました。
法改定を審議した国会で政府は、原則40年とした根拠について▽原子炉の圧力容器の壁は中性子が照射される期間が長くなるほどもろくなる▽原子炉設置許可を申請する際、重要な設備や機器などの設計上の評価が運転開始後40年使用を想定していることが多い―などを挙げました。細野豪志・原発担当相(当時)は「安全上のリスクを低減するのが運転制限制度の目的」(12年6月5日、衆院環境委員会)と答弁していました。
12年末に自民党が政権復帰すると、原発依存を鮮明にします。14年に安倍晋三政権が決定した「エネルギー基本計画」で原発を「重要なベースロード電源」に位置付けるなどした下で、規制委は運転開始40年超の原発4基について再稼働を認めました。原則40年をなし崩しにし、「例外」の最長60年運転を次々認めた規制委の姿勢に国民の批判は高まりました。一方、原発再稼働をさらに加速させたい財界・電力業界にとっては、原則40年・最長60年の上限が既設原発をフル活用する上での制約になっているため、撤廃を迫る意見が繰り返し出されていました。
地震や火山など自然災害が相次ぐ日本で原発を運転すること自体、大きな危険があります。ましてや老朽化した原発はリスクを一層高めます。福島第1原発事故直後の国会での審議の内容や法改定の経過を踏まえずに、原則40年の運転期間を撤廃するのは、あまりにも乱暴です。
経産省は、原発が運転停止をしていた年数を運転期間に算入しないことも検討するとしています。停止年数の運転期間からの除外は、原発を可能な限り長く動かし続けたい財界が強く求めているものです。しかし、運転を長期間止めていた原発には運転してから初めて分かるリスクがあると専門家は指摘しています。安全を置き去りにした年数除外は許されません。
エネルギー政策の転換を
岸田首相は「原発の最大限活用」を掲げ、運転期間延長や再稼働にとどまらず、「次世代革新炉」の新増設などを進める姿勢です。
原発依存は、いま最も必要な再生可能エネルギーの大規模普及の障害になっています。日本のエネルギー政策を根本から改めることが急務となっています。
(「しんぶん赤旗」2022年10月15日より転載)