参院選に向けた党首討論などで、日本維新の会の松井一郎代表が軍拡や改憲をあおる極端で異常な発言を繰り返しています。自民党をより右から引っ張る“突撃隊”の正体があらわです。
「2%」の実行を
松井氏は16日のテレビ党首討論でロシアのウクライナ侵略をひきあいに、「強い日本の防衛力、抑止力をつくっていく必要がある。自民党の中でもGDP(国内総生産)比2%に引き上げるべきと主張されている方もいる。そういう基準の中で防衛費枠をしっかりと検討して決めていくべきだ」と述べ、岸田首相に軍事費の2倍化を実行するように迫りました。
自民党政府が憲法9条との関係で制約としてきた「専守防衛」についても「戦争に負けた、今から80年前の昭和の考え方の答弁だ」と悪罵を投げつけ、「積極的な防衛能力をもつべきだ。そのためにはタブーなき議論をすべきだ」と大軍拡をあおっています。
さらには、選挙公約にもない原子力潜水艦の保有について「ここは性能のいい原子力潜水艦を、日本でつくるか、リースするか、いろんな方法があると思いますので、ぜひやるべきだ」(19日、フジテレビ番組)と述べ、非核三原則を投げ捨てる姿勢まで打ち出しています。
「核抑止もつべき」
「タブーなき議論」の筆頭に掲げているのが「核共有」です。ここでもウクライナ侵略をひきあいに、「目の前で世界で一番核を保有しているロシアが、核で脅しをかけている。われわれは核の犠牲になっちゃだめだし、核というものの、抑止力をもつべきだ」(16日のTBS番組)と発言。
松井氏は、被爆地・長崎市の街頭演説でも、「抑止力を持たないといけない。アレルギーはあるかもしれないが、タブーなき議論が必要だ」(11日)と述べていました。
松井氏の発言は、日本共産党の志位和夫委員長が「日本被団協のみなさんが『日本国民を核戦争に導き、命を奪い、国土を廃墟(はいきょ)と化す危険な提言だ』と撤回を求めています。これが被爆者の声だ」と指摘したように亡国の議論です。
「改憲日程決めよ」
改憲問題でも、松井氏は自民党をあおる発言を繰り返しています。
18日のインターネット番組では「岸田総理は、国民投票までの憲法改正に積極的にのぞむということですが、これはスケジュールを決めないと前に進んでいきません」「来年の統一地方選挙にあわせて、憲法改正をやっていくんだという考えをおもちか」と首相に迫りました。21日の日本記者クラブの討論でも岸田首相に「改憲のスケジュール」を示すように重ねて質問。首相も「できるだけ時間をかけずに国民に選択をしていただく機会をつくる」(18日)と応じました。
ここまで露骨に改憲を迫った政党党首はかつてありません。松井氏は9日の記者会見で「自民党の党是は憲法改正だが、いまだにやっていない。われわれが『自民党をピリッとさせる』というのは、自民党に公約を守らせるということだ」と述べていました。改憲の旗振り役が「自民党をピリッとさせる」ことだとしたら、まさに改憲の“突撃隊”そのものです。
「原発を動かせ」
深刻さを増す物価高騰や暮らしの問題でも松井氏は「アベノミクスは金融緩和と財政出動はやったけど、規制改革が足りなかった」(16日)、「金融緩和はやめるべきではない」(19日)などと述べ、破綻したアベノミクスにしがみつく無責任ぶりです。
そのうえ、エネルギー価格の高騰を口実に、福島第1原発事故が収束していないもとで、「われわれは国会冒頭から動かせる安全な原発を動かすべきだと岸田総理に提案してきた」(16日)と原発の速やかな再稼働を主張し、安全置き去りの姿勢を示しました。
松井氏は、19日のテレビ党首討論で終身雇用を見直すべきと主張し、「自由に働ける形で新しい産業に人を流していくべきだ」と述べ、大企業が求める不安定雇用の拡大を主張しました。
規制緩和でも原発再稼働でも、自民党を右から引っ張る役割は鮮明です。
(「しんぶん赤旗」2022年6月22日より転載)