これでは、また事故をくり返す―。福島原発訴訟で国の責任を免罪した最高裁。津波の規模が想定外で対策をとっても防げなかったという主張に、怒りの声がひろがりました▼生業(なりわい)やふるさとを奪われ、苦難を強いられてきた人びとに背を向けた判決。とり返しのつかない原発災害を二度と起こしてはならない、そんな思いはないのか。行政を監視し、国民の権利と自由を守るべき司法の役割に照らしても理不尽です▼最高裁の不当な判断が続いています。大阪の府立高校に通っていた女性が生まれつき茶色い髪を黒く染めるよう強要され不登校になったとして府を訴えていた裁判。最高裁は女性の上告を退け、「頭髪指導は違法ではない」との判決が確定しました▼注目された裁判は、子どもの人権や人格を否定する過度な校則についての議論がわき起こるきっかけにも。しかし学校の裁量の範囲内だとして、そこに踏み込もうとはしませんでした▼先の原発も黒染め指導の訴訟も判決を確定させた裁判長は同じ人物です。いまの最高裁判事は長官を入れて15人。女性は2人だけで全員が安倍・菅内閣に任命されています。昨年の国民審査では対象となった11人がいずれも「信任」されました▼×を付けない白票を信任とする審査方法には改善をもとめる声が渦巻いています。戦後の設立から75年、日本国憲法とともに歩んできた最高裁判所。権力におもねることなく、憲法の番人としての務めを果たしているのか。あり方が大きく問われています。
(「しんぶん赤旗」2022年6月20日より転載)