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国の賠償責任認めず・・福島第1原発事故訴訟で最高裁

判決を受け、報告する馬奈木厳太郎弁護士=17日、最高裁判所前

裁判官4人中 反対意見1人

 東京電力福島第1原発事故で避難した住民らが、国に損害賠償を求めた4訴訟の判決が17日、最高裁第2小法廷でありました。菅野博之裁判長は、国の機関が2002年に公表した地震予測「長期評価」に基づく津波対策を、経済産業相が東電にとらせたとしても、「同様の事故が発生しなかったであろうという関係を認めることはできない」として、国の賠償責任を認めませんでした。原告側弁護団は「受け入れるわけにはいかない」と批判しました。

 判決は裁判官4人のうち3人の多数意見。1人の反対意見がつきました。

 福島、群馬、千葉、愛媛各県の避難者計約3700人が起こした4訴訟の初の統一判断。

 判決はまず、経産相が長期評価による津波対策を義務づけた場合、試算に基づいて防潮堤等を設置する対策がとられた可能性が高いと指摘。他の対策が講じられなければならなかったということはできないとし、建屋への浸水を防ぐ水密化の措置を講じるべきだったとする原告の主張を退けました。

 その上で、防潮堤だけでは「同様の事故が発生するに至った可能性が相当にある」と結論づけました。

 「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟弁護団事務局長の馬奈木厳太郎弁護士は「法令の趣旨、目的にのっとって規制権限が行使されていたのか、長期評価に基づいて予見できたのかといった丁寧な判断プロセスが示されるべきだが、反対意見の記述を除いて示されなかった」と指摘。「検討されなくてはいけないこと、裁判所において示されなくてはいけないことが欠落している、肩すかしの判決」と批判しました。

 東電の賠償責任については、3月に最高裁が今回の4訴訟を含む7訴訟で東電の上告を退け、国が定めた賠償の目安を上回る賠償額が確定しています。

(「しんぶん赤旗」2022年6月18日より転載)