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国の責任 どう判断・・原発避難者4訴訟 あす最高裁判決

福島第1原発事故の被害者が国などに損害賠償請求を求めた訴訟の上告審で、最高裁に向かう原告ら=4月25日、東京都千代田区

津波予見・事故回避可能性 最大焦点

 東京電力福島第1原発事故で避難した住民らが国に対して損害賠償などを求めた上告審判決が17日、最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)であります。同事故に対する国の法的責任について最高裁の初めての判断になります。(松沼環)

 判決が出されるのは、「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟(生業訴訟)、千葉訴訟、群馬訴訟、愛媛訴訟の4訴訟です。

 4訴訟はいずれも、東電の賠償責任について最高裁が東電の上告を退け、国の賠償基準「中間指針」を上回る賠償額が確定しています。一方、国の法的責任の有無について4訴訟の高裁判決は判断が分かれています。

 福島原発事故をめぐっては同種の訴訟が全国で30件程度起こされています。また、東電旧経営陣に対する刑事裁判や株主代表訴訟裁判でも多くの争点が共通しており、最高裁が国の法的責任を認めた場合、その影響は大きいと考えられます。

 原告らは、経済産業相が、東電に対し電気事業法に基づく技術基準適合命令を発しなかった「規制権限の不行使」を違法と主張しています。ここで最大の焦点が、事故の原因となった大津波を予測できたかです。その根拠となるのが、国の地震調査研究推進本部が2002年に公表した地震予測「長期評価」の信頼性です。

長期評価めぐり

 原告らは、長期評価に基づけば福島第1原発の敷地を上回る津波の到来が予見でき、そのことから原子炉が深刻な災害を引き起こす恐れが認識できたのだから、当時の規制当局が東電に是正措置を命ずるべきだったと指摘しています。

 これに対し、国は長期評価について、地震学上確立したものではなかった、地震津波の専門家からは複数の異論が出されていたなどその信頼性を否定。群馬訴訟の東京高裁判決も長期評価の知見には「異論があった」などとして、長期評価によって津波の発生を予見することができたとはいえないと判断しています。

 一方、原告は、長期評価は、多数の専門家が科学的議論を重ねて策定された公的な見解で、科学的根拠と信頼性を有するとしています。生業訴訟の仙台高裁判決は、長期評価が、学者や民間団体の一見解とは格段に異なる重要な見解と指摘し、「相当程度に客観的かつ合理的根拠を有する科学的知見であったことは動かし難い」としています。

対策していれば

 国が規制権限を行使し、東電に対して津波対策を取らせていたら事故が防げたかどうかも焦点です。

 国は、長期評価に基づく津波を考慮して防潮堤を設置しても、東北地方太平洋沖地震の津波とは異なるため、津波の侵入を防止できなかったし、施設の浸水を防ぐ水密化のみによる対策は確立していなかったなどと主張しています。

 原告らは、敷地高さを超える想定津波を前提に、防潮堤の設置や建屋の水密化などの対策を実施していれば、実際の津波の影響はかなり軽減され、全電源喪失に至ることはなかった蓋然(がいぜん)性が高いとしています。

規制権限の行使

 国はまた、旧原子力安全・保安院が取った対応について規制権限行使に関する裁量が認められることから、許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くとは言えないと主張しています。

 これに対し、原告らは、長期評価公表から8年以上何もしなかったことは、規制権限を付与した規制法令の趣旨、目的が踏みにじられていると指摘。生業訴訟仙台高裁判決は、保安院の対応について「規制当局に期待される役割を果たさなかったものと言わざるを得ない」と指摘しています。

(「しんぶん赤旗」2022年6月16日より転載)