東京電力福島第1原発事故をめぐって、研究者や弁護士らでつくる福島原発事故賠償問題研究会(代表・吉村良一立命館大学名誉教授)は8日、国の原子力損害賠償紛争審査会(原陪審)が定めた賠償基準「中間指針」を見直すことは当然だとする提言を原陪審に提出しました。いずれも「中間指針」の水準を上回る損害賠償を認めた七つの高裁判決について最高裁が今年3月、東電の上告を退けたことで確定したのを受けたもの。
会見した吉村代表は「事故から11年、(追補含む)指針ができてから8年半。被害の長期化や広がり、深刻な問題が明らかになっている。原陪審が当時、視野に入っていなかった損害がたくさん出ている」と述べ、その反映が、「中間指針」を上回る損害賠償を認めた七つの判決だと指摘。「指針の見直しは当然必要だ」と述べました。
提言は、見直しの進め方について▽現在の段階での被害実態の把握▽被害者の声を聞く機会の保障▽高裁判決だけでなくADR(原子力損害賠償紛争解決センター)などでの和解の到達点の分析―を求めています。
その上で、県外を含む避難指示区域外の避難者やその地域に暮らす被害者の問題が指針では「欠落している」として、それらの被害者への賠償指針の策定をはじめ、「ふるさと喪失損害」や避難の長期化などを踏まえた見直しを求めています。
一方、文部科学省の原陪審(会長・内田貴東京大学名誉教授)は4月に会合を開き、指針の見直しも含めた対応を検討するため裁判官経験者などから5~6人の専門委員を選び、夏をめどに中間的な内容を原賠審に報告するとしています。
(「しんぶん赤旗」2022年6月9日より転載)