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東電旧経営陣控訴審が結審・・検察官役の指定弁護士 一審判決は「事実誤認」

東京電力福島第1原発事故をめぐり強制起訴され、控訴審のため東京高裁に入る元東電副社長の武黒一郎被告=6日午後、東京都千代田区(代表撮影)

東京高裁

 東京電力福島第1原発事故をめぐり業務上過失致死傷罪で強制起訴され、一審で無罪となった東電元会長の勝俣恒久被告と元副社長の武黒一郎、武藤栄両被告の控訴審の第3回公判が6日、東京高裁(細田啓介裁判長)でありました。検察官役の指定弁護士は、一審判決の「事実誤認は明らか」であるとして破棄を求めました。弁護側は、控訴棄却を主張し、結審しました。判決期日は追って指定されます。

 旧経営陣3人は、津波対策を怠り、原発事故で付近の病院の入院患者ら44人を死亡させたなどとして2016年に強制起訴されました。しかし、一審東京地裁は19年9月、国の機関が2002年に公表した「長期評価」の信頼性について「合理的な疑いが残る」などとして、3人に無罪を言い渡しました。指定弁護士が控訴していました。

 この日の公判では、勝俣被告と元副社長の武藤被告は体調不良などを理由に出廷せず、元副社長の武黒被告が出廷しました。

 指定弁護士は「長期評価」が科学的信頼性を有していると主張。「長期評価」に基づけば敷地高さを超える津波の襲来を予見できたにもかかわらず、被告人らがなんら対策をとっていなかったと指摘。「長期評価に信頼性が認められることを前提とすれば、被告人らの過失責任を否定することは正義に反する」と述べました。

 2人の被害者遺族による心情の陳述が行われました。父親が事故の避難中に死亡した遺族の「東電はどうして何も責任をとらないのか」とする内容を被害者代理弁護人らが代読しました。

 裁判後の会見で告訴団の武藤類子団長は、結審したことについて「現場検証もなく、審理は尽くされたとは思えない」と語りました。

(「しんぶん赤旗」2022年6月7日より転載)