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東電側「心から謝罪」 福島原発避難者訴訟原告に・・社長は出席せず

記者会見で話す早川篤雄原告団長(右)、金井事務局長(左)ら原告団=福島県双葉町

 東京電力福島第1原発事故で避難した住民が東電に損害賠償を求め勝訴した福島原発避難者訴訟(早川篤雄原告団長)の原告団・弁護団が東電に「加害責任を認め、原告らに真摯(しんし)な謝罪」を要求していた問題で5日、福島県双葉町で謝罪の場が設けられました。訴訟では最高裁が東電の上告を退け判決が確定しています。

 東電の小早川智明社長は出席せず、常務執行役で福島復興本社の高原一嘉代表が原告団に「原告はじめ被害に遭った方々に深く謝罪します」と述べ、小早川社長の謝罪文を代読しました。弁護団によると、原告に謝罪の場が設けられるのは初めてだといいます。

 小早川社長は謝罪文で、「(事故で)みなさまの人生を狂わせ、心身ともに取り返しのつかない被害を及ぼすなど、さまざまな影響をもたらしたことに対し、心から謝罪いたします」と述べました。

 謝罪文を受け取った原告団長の早川篤雄さん(82)は「(思いは)複雑で、一言で表すことはできません」と述べ、仙台高裁判決(2020年)を真摯に受け止めた誠意ある謝罪を期待していたものの「私の期待するところには至りませんでした」と語りました。

 原告団事務局長の金井直子さん(56)は「真摯な謝罪を受けたことを素直に受け止めたい」といい、東電の上告を棄却した「最高裁の正義の結論をやっと本日、現実の形として実感することができました」と話しました。

 記者会見した弁護団の米倉勉幹事長は「この謝罪には積極面と消極面の両方ある」とし、仙台高裁判決が東電に対して津波対策を先送りにして防ぐことができたはずの事故を発生させたことを正面から認めていないと指摘。

 他方で「大きな進展もある」と報告。これまで「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」と加害責任を認めて謝罪することを拒否してきた東電が「被害を及ぼしたこと」を「心から謝罪」と表明したことは、社会的道義的な責任を加害企業として無視できなかったからだと強調し、被害地域の除染の継続や廃炉作業の安全性の確保などの努力を怠らないよう求めました。

「一歩前進」「怒り感じる」 原告側、さまざまな思い

 記者会見では東電の「謝罪」に対してさまざまな思いが語られました。

 早川原告団長は「原発事故の責任は国と東電。事故の責任を認める東電の謝罪は、一歩前進だが、これから国の責任が認められるかどうかにかかっている」と話しました。

 國分富夫副団長(77)は「非常に怒りを感じる。これだけの事故を起こした会社の社長が謝罪に来ないなんて考えられない」と述べ、「被害者を甘くみた謝罪だった」と批判しました。

 畑中大子原告団世話人代表(73)は、社長の謝罪文で「福島への責任の貫徹」が最大の使命だとあったことについて、国と東電が同じ姿勢をとってきたので「この先も実行されるのか」と発言。「住民は早く双葉郡に戻りたい。原発を一日も早く廃炉にしてほしいのです。言葉を実行に移して」と語りました。

 金井事務局長は「私のなかでは、区切りになった。これから東電の姿勢も問われる。地域がよくなっていくような、希望が持てるような将来につながることを願っています」と話しました。

福島原発避難者訴訟

 訴訟は、事故で避難指示が出された福島県沿岸部の楢葉町、浪江町、大熊町、双葉町、富岡町などの住民216人が2012年12月に訴えたもの。20年3月の二審判決は、東電が津波対策の計画や実施を「先送りしてきた」として、被害者にとって「誠に痛恨の極み」と指摘。国が賠償範囲などを定めた「中間指針」にない「ふるさとの喪失による慰謝料」などを認定し、計約7億3350万円の賠償を命じました。最高裁第3小法廷が今年3月7日、東電の上告を棄却し、二審判決が確定しました。全国で約30件ある同様の集団訴訟で東電の賠償が最高裁で確定したのは7件。一方、事故をめぐる国の責任について17日、最高裁が4訴訟の統一的な判断をします。

(「しんぶん赤旗」2022年6月6日より転載)