東京電力福島第1原発事故で発生する放射能汚染水を処理した後に残る高濃度のトリチウム(3重水素)を含む汚染水(アルプス処理水)を基準値未満に薄めて海に放出する計画をめぐり、環境団体のメンバーらが2日、原子力規制庁や東電との会合を開き、計画への疑問や問題点について議論しました。計画の進め方や情報公開のあり方など、多くの問題が指摘されました。
原子力規制委員会は5月18日、東電が申請した審査書案を了承。今月17日まで一般から意見募集しています。
ウランなど、トリチウム以外の放射性物質の種類や総量についての疑問、大型タンクによる長期保管案やモルタル固化処分など代替案の検討が不十分であること、誰でも参加できる説明公聴会の実施など、環境団体側が事前に準備した21項目の質問や要望について、規制庁や東電側と議論しました。
環境団体側は、廃炉作業で溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しが困難とされるなかで、デブリの保管場所の確保のために海洋放出してタンクを解体・撤去することが「リスク低減と最適化」になるとする規制委の判断について、妥当ではないと指摘。代替案も含めて再検討すべきだと求めました。
また、汚染水を処理する過程でフィルターの目をすり抜けたウランの微粒子の量を測定する必要性を指摘しました。費用に関する質問に対して、東電は、海洋放出設備の建設など、向こう3年間程度で約430億円必要になるとの見積もりを示しました。
FoEジャパンの満田夏花(かんな)事務局長は、政府や東電が「理解促進」としながら、漁業者との約束を破って計画を進めていることについて、「一方的な理解の押し付けでいいのか」と批判しました。
(「しんぶん赤旗」2022年6月3日より転載)