5月23日の日米首脳会談後の共同声明では、原子力発電を「重要かつ信頼性の高い供給源」と位置づけ、小型モジュール炉などの開発加速を表明しました。また、公表された「気候パートナーシップ・ファクトシート」では既設炉の最大限活用を、「競争力・強靱(きょうじん)性パートナーシップ」では運転期間の長期化などの協力をうたっています。これは、岸田文雄首相の原発「最大限活用」表明と軌を一にし、原発の復権・永久化をめざすものです。
小型炉などの開発に執着する背景には、原子力という軍民両用技術の分野での、中国・ロシアとの覇権争いがあります。日米では、建設中が数基あるとはいえ、原発建設が進まず、廃炉が相次ぎました。世界の原発市場では、中国・ロシアが席巻しているとみて、「米英加をはじめとした先進国では小型炉、革新炉に活路を見いだ」そうとしているのです(昨年10月閣議決定の「エネルギー基本計画」)。
しかし、世界全体では、多くの国で原発の老朽化が進んでいます。世界431基のうち66%が30年超(うち25%が40年超)です。特に最大の原発大国アメリカでは、50年超の4基をはじめ98%が30年超(53%が40年超)です。日本では、東京電力福島第1原子力発電所事故後に古い原発の廃炉を進めたものの、残存する原発の52%に当たる17基が30年超(うち40年超は4基)となっています。共同声明は、小型炉の開発がまだめどもたっていない状況で、既設炉を廃炉させず長期に運転を続けさせることで、とにかく原発を維持しようというものです。
共同声明等は、気候危機対策を原発活用の口実としています。しかし、東電福島原発事故の現実が示すように、原発の抱える危険は社会的に受け入れることのできないものです。しかも、共同声明等では、石炭火力の廃止には触れようとしません。この点をみても、気候危機対策を原発活用の口実として振り回すのは、不誠実極まりないと言わざるを得ません。
(日本共産党原発・気候変動・エネルギー問題対策委員会 鈴木剛)
(「しんぶん赤旗」2022年6月3日より転載)