全国で唯一、県庁所在地に立地し、半径30キロ圈に約46万人が暮らす中国電力島根原発2号機(松江市)の再稼働について、島根県の丸山達也知事は6月2日の県議会本会議で再稼働同意を表明しました。
知事は同意判断に至った理由について安全性、避難対策、必要性、関係自治体等の意見を挙げ、「再稼働は現状においてやむを得ない。容認することとする」と述べました。
避難計画については、現時点で実効性があるとの認識を示しながらも「不安や疑問など一つひとつの声を参考にしながら実効性を高めていく」と述べ、必要性については、地域経済や温室効果ガス削減など「原発が一定の役割を果たしていく必要があるという国の説明は理解できる」と強弁しました。
丸山知事の同意表明を受け、日本共産党の尾村利成、大国陽介の両県議、舟木健治、橘ふみ両市議は同日、県庁前で抗議宣伝。尾村、大国の両県議は「県民の命と安全を守ることができるかどうか」「県民の理解と合意が得られているのかどうか」の2点を判断基準にした際、「避難計画の実効性はなく、県民の理解と合意は得られていない」と強調し、「原発ゼロの島根を一緒につくろう」と呼びかけました。
同日、原発ゼロをめざす島根の会などが県庁前庭で再稼働反対の集会を開きました。
住民の安全最優先に再稼働やめよ
中国電力島根原発2号機(松江市)について、島根県の丸山達也知事が県議会本会議で「現状においては、やむを得ないと考え、容認することとする」と述べ、再稼働への同意を表明。同意の理由に「原発が一定の役割を果たしていく必要があるという国の説明は理解できる」などとしました。
災害の対応困難
岸田政権は、原子力の「最大限の活用」などとして再稼働の加速をねらっています。島根原発2号機は2030年にも法律で原則40年とされた運転期間を超えます。政府のエネルギー基本計画が掲げた2030年度の原子力の目標を達成するには、審査に申請した27基すべてが運転を続ける必要があります。長期運転の模索も表明しており、老朽原発の酷使は安全性をさらに犠牲にします。
同原発は重大事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型。再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査で、同原発を含め5基が基準に「適合」していますが、再稼働した原発はありません。
島根原発は全国で唯一、県庁所在地に立地します。原発から10キロ圏内には県庁をはじめ県警察本部など中枢機関があり、県庁などがある地区に避難指示が出れば、災害対策本部自体が出雲市に移転するなど、原子力災害発生時の対応に困難が予想されます。
事故時の住民避難は大きな問題です。島根原発の場合、避難計画が義務づけられている半径30キロ圏内には島根県と鳥取県の6市に約46万人が暮らし、在宅の要支援者は約4万人に上ります。避難計画で島根県の住民のなかには県境を越えて岡山県や広島県に避難する計画になっています。計画の実効性は保障されていません。
日本原子力発電東海第2原発(茨城県)について水戸地裁は21年3月、「実現可能な避難計画が整えられていると言うにはほど遠い」と指摘し、運転の差し止めを命じる判決を出しています。これは当該原発だけの問題ではありません。
不正繰り返され
中国電の体質の問題もあります。10年に500カ所以上の点検漏れが発覚。再発防止を誓った後も、データのねつ造などの不正が繰り返され、昨年は規制委から貸与された機密文書を誤廃棄しながら、6年間報告していなかったことが判明しました。この5月には、業者が期限切れの身分証を使って原発構内に立ち入っていたことがわかり、テロ対策・安全対策の不十分さが明らかになっています。
住民の安全を最優先にするなら再稼働はやめるべきです。岸田政権の原発固執政治から脱却し、省エネと再生可能エネルギーへの転換を急ぐべきです。(「原発」取材班)
(「しんぶん赤旗」2022年6月3日より転載)