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主張 泊原発差し止め 「最大限活用」の危険は明らか

 札幌地裁が、北海道電力泊原発1~3号機の運転差し止めを命じました。判決は「津波に対する安全性の基準を満たしていない」などとし、事故の場合、住民の生命・身体といった人格権が侵害されるおそれがあると指摘しました。安全性について説明を尽くさない同社の姿勢も批判しました。

 岸田文雄政権はウクライナ危機下でのエネルギー安定供給を口実に「原発の最大限活用」を打ち出し、再稼働加速に前のめりです。しかし、原発推進ありきの姿勢が、いかに安全置き去りにつながるかを、今度の判決は改めて浮き彫りにしました。

津波対策の不備を指摘

 泊原発は、2011年の東京電力福島第1原発事故後の12年5月までに全3基の運転を停止しました。北海道電力は13年7月、新たな規制基準に基づき原子力規制委員会に再稼働を申請し、現在も審査が続いています。

 住民は安全性に問題があるとして、運転差し止めと廃炉などを求め11年11月に提訴してたたかってきました。

 判決は津波対策の防潮堤について「地盤の液状化や揺れによる沈下が生じる可能性がないことを、北海道電力は、相当な資料によって裏付けていない」と述べました。また、建設予定の新たな防潮堤も構造が決まっておらず、津波防護機能を保持する施設は「存在せず」と認定しました。

 福島第1原発事故後、原発の運転を認めない判決は4件目です。他に差し止めの仮処分決定は5件あります。原告弁護団によれば、津波対策の不備を理由にした差し止め判決は今回が初めてです。

 判決は、原発が規制委の安全基準を満たすか否かは北海道電力の側に立証責任があるとしました。その上で、科学的・技術的知見の他、施設の設計や構造の安全性に関する資料を持っている同社が立証を尽くさない場合、原発が自然現象に対する安全性を欠いており、それにより予想される事故で被害をうける周辺住民は人格権侵害のおそれがあると述べました。

 裁判が提起されてから10年以上たちます。規制委の審査開始から約9年です。判決は、これだけの期間を要しても同電力が立証を終えることができないのは「泊発電所が抱える安全面ないし審査における問題の多さや大きさをうかがわせる」と記しました。

 裁判でも規制委の審査でも安全性を説明できない北海道電力が、原発を運転する資格や能力を欠いていることは明らかです。泊原発は運転を中止するだけでなく、廃炉にすることが必要です。

審査の形骸化許されない

 岸田首相が原発の「最大限活用」を表明する中で、自民党や日本維新の会からは原発運転の前倒しに向けて、規制委の審査の効率化を求める声が相次いでいます。

 原発の稼働にかかわる規制の制約を一時的に除外することを求める自民党などの意見について、規制委の更田豊志委員長は議論に応じる立場を隠しません。規制委の審査を形骸化させることは、福島第1原発事故の教訓に学ばない逆行であり、到底許されません。

 ロシアがウクライナ侵略の際、原発を攻撃・占拠したことは世界に衝撃を広げました。いま急がれるのは、原発頼みのエネルギー政策からの脱却です。

(「しんぶん赤旗」2022年6月2日より転載)