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再稼働へ「効率審査」 エネ高騰に乗じ自維大合唱・・専門家指摘 安定「省・再エネでこそ」

関西電力高浜原発(手前が1,2号機)=2019年10月、福井県高浜町

 岸田文雄首相はロシアのウクライナ侵略などに伴うエネルギー価格の高騰に乗じて原子力の活用を繰り返し発言しています。さらに自民党内の議員連盟や日本維新の会は停止中の原発の速やかな再稼働に向けた審査の「効率化」やテロ対策のための特定重大事故等対処施設(特重)の設置期限の見直しを政府に求めています。対ロ制裁をめぐるエネルギー問題に便乗した再稼働促進の主張に専門家は「間違っている」と指摘します。(松沼環)

 再稼働に必要な原子力規制委員会の審査は、今も7原発10基で継続中です。これらの原発については、敷地内の断層や地盤の評価など安全に大きくかかわる調査や議論が続けられており、「効率化」と称して審査の形骸化は許されません。

 また、規制委はこれまでに10原発17基に再稼働に必要な許可を出し、再稼働に至ったのは10基です。

 許可を得ながら再稼働に至っていないのは、工事中や詳細な耐震評価など審査に必要な資料がまだそろっていないことなどが理由。審査、検査の効率化で再稼働を促進するなど論外です。

不備次々

 東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)では、テロ対策の不備が次々と発覚し、状況の改善が確認されるまで事実上の運転停止が命じられています。原子力事業者としての適格性が問われる事態です。

 特重について、自民議連が3月に出した決議では、設置期限の見直しなど「稼働継続を可能とする措置」を求めています。

 また、同党の特別委が16日に岸田首相に提出した「提言」では、特重のルールの取り扱いを含めた「再稼働加速への制度的対応」に言及しています。

 特重は、福島第1原発事故を受けて作られた新規制基準で設置が義務付けられました。設置の猶予期間が設けられていますが、期限までに完成しなければ再稼働した原発でも工事完了まで運転を停止することになります。

 テロがいつ来るか予測できないことを考えれば、特重未設置での運転を許容する猶予期間が存在することの方が問題です。

完了せず

 再稼働した原発では5基で特重が設置済みですが、5基は工事中です。

 定期検査中の九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県)は特重の設置期限までに工事が完了しない見通しです。九電は、来年1月に3号機の運転を再開。4号機は、7月に定期検査を終了しますが、設置期限となる9月に再び停止させ発電の再開は来年2月の予定です。9月の関西電力の大飯原発(福井県)3号機は8月が特重の設置期限ですが、完成は12月の見込みです。

 昨年再稼働した関西電力美浜原発3号機(福井県)は、特重が期限までに完成せず再停止し、今年10月に稼働する予定。同じく老朽原発の関電高浜原発1、2号機(福井県)は工事の遅れで再稼働できないまま特重の期限を迎えました。特重の完成は23年の予定です。

原発推進間違い

 龍谷大学の大島堅一教授(環境経済学)の話 エネルギー価格が高騰したからといって、規制を緩めて原発再稼働を進めるのは間違っています。需給関係を安定させるには需要を抑える省エネ対策は即効性があり、政府は優先して取り組むべきです。また、大手電力会社の発電した電気を市場に全て出せるのも効果的です。省エネの市場をつくるとか、省エネ対策への誘導政策などの取り組みが求められます。

 また、安定供給を考えた場合、原発や火力などの一極集中型の電源が最も危ういといえます。東日本大震災後の計画停電や北海道胆振(いぶり)東部地震、今年3月の福島沖の地震など大規模電源の損傷による安定供給の問題が繰り返されています。

 こういったことに備えるには、分散型電源の再生可能エネルギーや需要側が柔軟に対応できる制度的な仕組みを整えるべきです。原発再稼働は関係ありません。

(「しんぶん赤旗」2022年5月18日より転載)