【ハノイ=面川誠】フィリピンで5月9日、大統領選挙の投票が行われました。事前の世論調査では、フェルディナンド・マルコス元上院議員(64)が優位に立ち、レニー・ロブレド副大統領(57)が追う展開。両候補は対中国、原発政策で対立しています。大統領の任期は6年で再選禁止。有権者数は約6500万人。即日開票されます。
中国は南シナ海全域での主権を主張していますが、国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所は2016年7月、中国の主張を退けました。ロブレド氏は中国が裁定を受け入れるよう要求。「ベトナムのように、貿易と投資といった紛争のない分野での協力は行う」という立場です。
マルコス氏は「フィリピンだけが受け入れた裁定は効力がない」と公言。「法と主権の問題だという本質を理解していない」と批判されています。
フィリピンでは1984年にバターン原発が完成しましたが、未稼働のままです。ドゥテルテ大統領は3月、電力需要を満たすためとして稼働計画の策定を命じる大統領令に署名しました。マルコス氏はこれを支持。ロブレド氏は「原子力を優先しない」と表明しました。
マルコス氏は1986年まで独裁政権を続けた実父のマルコス大統領について、政権初期の経済開発の実績を強調し、人権侵害も不正蓄財もすべて「裁判で証明できなかった」と虚偽の主張を繰り返しています。経済開発から取り残された多くの人々から支持を集める一方、民主主義を否定し歴史を書き換える行為という強い批判を浴びています。
(「しんぶん赤旗」2022年5月10日より転載)