日本共産党嶺南地区委員会 > しんぶん赤旗 > 原発事故 人生返せ・・福島生業訴訟 最高裁で弁論・結審

原発事故 人生返せ・・福島生業訴訟 最高裁で弁論・結審

最高裁に入廷する生業訴訟の原告ら=25日、東京都千代田区

 東京電力福島第1原発事故をめぐって福島県など4県の住民約3600人が国と東電に損害賠償と原状回復を求めた「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は4月25日、国の責任の有無について住民と国の双方から意見を聞く弁論を開き、結審しました。最高裁は、同様の他の3訴訟とともに夏ごろまでに統一的判断を示す見通しです。

 同訴訟では、二審仙台高裁が2020年9月、国と東電の賠償責任を認め、国と東電に約10億1000万円の支払いを命じました。国と東電が上告していましたが、最高裁は3月、東電の上告を退け、賠償額が確定しています。

 弁論で国側は、国の機関が02年に公表した地震予測「長期評価」に基づく津波の予見性を否定し、防潮堤設置などの対策を取ったとしても事故を防げなかったと主張しました。

 住民側は、「長期評価」が発表されてから東電に対して何もしなかった経済産業省の旧原子力安全・保安院の対応は、規制法令の期待も被害住民の期待も裏切るものだったと指摘。「長期評価」の信頼性を否定するなどの国の主張は、何もしなかったことを後付けで合理化しようとするものだと批判しました。

 事故当時、福島県富岡町に住んでいた原告の深谷敬子さん(77)が意見陳述。福島第1原発から直線で7キロにあった自宅と店は、もはや建物としての形をなしていないと言います。原告に加わった理由について、人生を返してほしかった、それが無理なら、誰の責任かをはっきりさせたかったと説明。「そうでなければ、またいつか同じような原発事故が起こり、私たちと同じような思いをする被害者が生まれてしまう」と訴えました。

 閉廷後に記者会見した深谷さんは「避難した人がどれだけ大変な思いをしてきたかということを裁判長に知ってほしくて陳述しました。11年と一言でいいますけど、私は11回引っ越しをしました。口では言えないほど大変な11年でした」と語りました。

(「しんぶん赤旗」2022年4月26日より転載)