東京電力福島第1原発事故で福島県から千葉県に避難した住民が国と東電に損害賠償を求めた千葉訴訟で最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は4月15日、国の責任があるかどうかをめぐる弁論を行い、原告側と国側双方が意見を述べ結審しました。最高裁は今後、5月までに同様の群馬訴訟、「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟(生業訴訟)、愛媛訴訟でも弁論を開き、国の責任について統一的判断を示す見通しです。
弁論では、福島県浪江町から避難した原告の小丸(おまる)哲也さん(91)が「私が人生をかけて築き上げてきたものを80歳にして全て失ってしまった」と述べ、「重大事故を起こした国の責任をはっきりと認めていただきたい」と訴えました。
住民側弁護士は、津波対策をめぐる国の東電への対応について「規制当局に期待される役割を果たさなかった」と批判しました。
一方、国側は、福島第1原発の敷地を超える津波が襲来する可能性を指摘した国の地震予測「長期評価」(2002年)について、規制に取り入れるだけの科学的知見ではなかったなどと主張しました。
千葉訴訟の二審東京高裁は2021年2月、国が東電に対し津波対策を求める規制権限を行使しなかったのは「違法」として国の責任を認め、東電と国の双方に原告43人に対し計2億7800万円の支払いを命じました。一審千葉地裁は国の責任を否定していました。
東電と国が上告しましたが、最高裁は今年3月、東電の上告を退けました。同様の訴訟は全国で30件以上ありますが、最高裁は同訴訟含め7件で東電の上告を退け、いずれも賠償の目安を定めた国の「中間指針」を上回る東電の賠償が確定しています。
一方、国の責任の有無についても争われた同訴訟を含む4訴訟の高裁判決は3訴訟で国の責任を認定していますが、1訴訟では否定。高裁判断は分かれています。
弁論後の会見で、小丸さんは、責任を否定する国側の陳述に「とんでもない話だと思った」と話しました。
(「しんぶん赤旗」2022年4月16日より転載)