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最高裁決定 東電の法的責任・賠償が確定・・福島原発避難者訴訟原告団長 早川篤雄さんに聞く

福島県楢葉町の宝鏡寺境内にある伝言館で語る早川さん

希望持てる復興へ運動続ける

 福島県楢葉町の山寺、浄土宗宝鏡寺の30代目の住職・早川篤雄(とくお)さん(82)は、東京電力福島第1原発事故で避難指示が出た住民が東電に損害賠償を求めた福島原発避難者訴訟の原告団長です。裁判は最高裁が7日付の決定で東電の上告を退け、東電の法的責任と賠償が確定しました。思いを聞きました。(三木利博)

 「ひと山越えました。しかし、これからが非常に大事です。むしろ今後、私たちの真剣な取り組みがなければ、被災地のほんとうの復興はあり得ない。新たな段階に入ったと思います」と早川さんはいいます。

加害者の謝罪を

 最高裁決定で二審仙台高裁判決(2020年3月)が確定。国の賠償範囲などを定めた基準「中間指針」による賠償が不十分なことを示し、指針による賠償は払い過ぎだとする東電の主張を退けました。早川さんら原告団・弁護団は東電の小早川智明社長に要求書を送付。同社に対し法的な加害責任を認めた上で真摯(しんし)に謝罪することや、ふるさとの回復に尽力することなどの対応を求めました。

 「事故を起こしたのだから、心から非を認めることが大前提です。これまで何回も東電に『真摯な謝罪』を求めてきましたが、東電は『ご迷惑をかけた』『お詫(わ)びします』という態度。加害者としての謝りがない。これは人間として許せない」と語気を強める早川さん。

 事故前の40年間にわたって裁判などで原発の危険性を訴える住民運動をしてきました。仙台高裁判決では、早川さんら市民団体が事故前に福島第1、第2原発の津波対策を求める申し入れをしてきたのに、東電が具体的な対策工事を先送りし事故に至ったとして、こんな指摘をしています。

 「経緯を被害者の立場から率直に見れば、被告(東電)の対応の不十分さは、誠に痛恨の極みと言わざるを得ず」

 早川さんは次のように指摘します。

 「東電は事故前、『安全神話』と札束で住民をだまし続け、数々の事故を隠してきました。事故は起こるべくして起きたのです。住民が訴えてきたことが正当に判断されていれば事故は起きなかった」

不条理に対して

 事故から11年になります。復興や再生を語る際、早川さんは事故の翌年に公布された「福島復興再生特別措置法」の条文を引きます。その基本理念に「人々が安心して暮らし、子どもを生み、育てることができる環境を実現する」「住民一人一人が災害を乗り越えて豊かな人生を送ることができるようにする」とあります。

 「それらが事故で破壊されたということです。事故前にチェルノブイリ原発の石棺も見ました。地域が再生するための大問題が、事故で溶融した核燃料を取り出せるのか、取り出せないのかです。どっちにしても負の遺産を何十代もの子孫に残す。しかも、こんな事故があったのに原発推進は収まらない。政府がやっていることは被災者に寄り添っていない」

 「残された、たった一つの希望まで奪うのが原発事故」と早川さんは、原発事故の被災者で命を絶った人たちの無念の思いを代弁して語ります。

 「希望が持てる復興にするため、ますます運動が必要です。自分ができる範囲で、自分が思いついた範囲で不条理に対し、これからも行動します。それがたたかう、生きるということじゃないですか」

 境内には昨年、「広島、長崎、太平洋ビキニ環礁、福島」の被害を伝える「伝言館」が開設され、今年は研修施設「未来館」を併設しました。

(「しんぶん赤旗」2022年3月21日より転載)