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原発への攻撃と国際法・・元日朝国交正常化交渉代表・軍縮代表部大使 美根慶樹さんに聞く

ジュネーブ条約で禁止 核兵器使用と同じ危険

 国連憲章違反の侵略をすすめるロシアは、ウクライナのザポロジエ原子力発電所への砲撃を行い、一部が破壊されました。世界規模の大惨事につながる危険性のある暴挙です。原発への攻撃と国際法の関係について日本政府の日朝国交正常化交渉代表や軍縮代表部大使を歴任した美根慶樹氏に聞きました。

 ロシアによるウクライナのザポロジエ原発への攻撃の一番の危険は、ロシア軍の攻撃で原発が破壊され、ヨーロッパ全体にその影響が及ぶことでした。実際そこまで至らなかったようですが、その危険はありました。

 そもそも原発は非常に危険性のある施設です。仮に爆発するようなことがなくても、原発への攻撃で放射能をまき散らすということになれば、一般市民がその犠牲になるという点では、核兵器を使用した場合と同じ危険があると言えます。

 だからこそ、ジュネーブ条約の追加第1議定書(1977年採択)の取りきめがあります。この議定書には“原発を攻撃してはならん”と明記されています。これは一番大事な規定です。一般住民の安全を脅かすことはしてはいけないという原則の下で、原発を攻撃してはいけないと書いてあります。

 一方で、議定書には例外規定として、原発を攻撃することが、侵略を止めるとか、軍事行動を止めるためにどうしても必要だという場合には、禁止規定は適用されないと書かれています。実際には、今まで私の知っている限り、例外規定に基づき原発が攻撃されたことはないと思います。

 ロシアの今回の攻撃の目的として考えられるのは、ウクライナの電力供給を抑えることによって、ウクライナ側を屈服させることです。ウクライナは電力の6割ぐらいが原発です。その4割ぐらいが今回攻撃にあった原発からつくられています。そこを制圧することで、電力をコントロールしようということではないか。

 ロシアは、議定書の例外規定のことは、当然知っている。ウクライナの軍事的抵抗を止めるには、この原発をたたくしかないという、極めて勝手な解釈をしているのではないでしょうか。

(「しんぶん赤旗」2022年3月10日より転載)