「秘密保護法案」で「秘密」を扱う公務員や軍需産業の従業員に実施される身辺調査制度(適性評価)とほぼ同じ内容の制度(信頼性確認制度)を、原子力施設内で働く従業員にも早期に導入する方向で政府が検討を進めていることがわかりました。
国のもつ広範な情報を秘密にする「秘密保護法」の策定と歩調を合わせて、事業者である電力会社などが保有する原発情報に対しても規制を強めようとする政府の姿勢を明確に示す動きです。原子力規制委員会が外部専門家を集めて議論を進める「核セキュリティに関する検討会」の議事録から明らかになりました。
同検討会の第2回会合(7月8日)では、制度導入について「喫緊の課題としてやる必要がある」「速やかな措置を」などの意見が出され、来年3月の核セキュリティサミットまでに制度設計の方向性をまとめる方針を確認しています。
事務方から示された「論点整理」の資料によると、調査項目は「国の利益を害する活動への関与」の有無から信用状態、薬物・アルコールの影響、精神問題での通院歴など多岐に及び、「秘密保護法案」の「適性評価」とほぼ同じ内容。治安当局(公安警察)が収集した従業員の個人情報への照会が制度の前提となっています。
同制度は、米国がテロ対策強化として日本に導入を要求していたことが2007年の米公文書から判明(4日付既報)。当時、日本政府は憲法上困難との認識を示しています。
実際、05年に経済産業省がまとめた報告書は、導入には憲法の保障する思想・信条の自由やプライバシー保護の観点などから「慎重な検討が必要」としていました。しかし、12年の原子力委員会報告書では「秘密保全法制の進捗(しんちょく)状況にかかわらず、導入するべき」と推進姿勢に一転。原子力規制委の検討会でも推進意見が大勢を占めています。
信頼性確認制度 原子力施設内で働く電力会社、協力会社社員に詳細な個人情報調査を行い、内部からの情報漏えいやテロを“予防”する制度。東京電力をはじめとする電力会社では社に批判的な組合活動などをする社員を治安当局と一体に差別・排除し、情報隠しが横行する「原子力ムラ」の体質をつくってきた経緯があります。