【ワシントン=島田峰隆】米英独仏4カ国で原子力エネルギーの規制や管理を担う機関で責任者を務めてきた専門家4人は1月25日、共同声明を発表し、「原子力は気候変動対策のいかなる実現可能な戦略の一部にもならない」と指摘しました。原子力発電を地球温暖化対策の有効な手段と位置付ける動きに反論した形です。
声明を発表したのは、米原子力規制委員会のグレゴリー・ヤツコ元委員長、英政府の内部放射線被ばくリスク調査委員会の元責任者ポール・ドーフマン氏、ドイツ環境省の原子力安全・放射線防護・核廃棄物担当の元責任者ウォルフガング・レンネベルク氏、フランスのエネルギー管理局元長官のベルナール・ラポンシュ氏の4人です。
声明は「新世代の原子力はクリーン、安全、スマート、安価だというメッセージは作り話だ」と強調。「現実には原子力は重大な害悪を与える可能性のある非常に複雑な技術だ。安価でないばかりか極端に高くつくものだ」と指摘しました。
原発が気候変動対策にならない理由として▽エネルギー生産や二酸化炭素排出削減の点で再生可能エネルギーより高くつく▽長期にわたる放射性廃棄物の問題が解決されないため持続不可能▽偶発的な放射能放出の潜在的な総コストや環境や人間への影響に対していかなる経済機関も保険をかける用意がなく、財政的に持続不可能▽人的ミス、内部故障、外部からの衝撃による避けられない事故のため本質的に危険だ―などを挙げています。
岸田首相が脱炭素社会の実現へ実用化を目指すとしている原子力の小型モジュール炉(SMR)についても、「未解決の技術上、安全上の問題が多すぎる」と指摘しています。
(「しんぶん赤旗」2022年1月27日より転載)