きょうの潮流

 東京電力福島第1原発が立地する福島県双葉町は10年10カ月前の事故で帰還困難区域に指定され、全町避難が続く唯一の自治体です。先日、避難解除後の帰還に向けて自宅で寝泊まりできる準備宿泊が始まりました▼元のコミュニティーなどはなく、事故後初めて自宅に戻った人の気持ちは複雑だといいます。宿泊を申請したのは11世帯15人。事故前は約7000人が暮らしていました。町は、帰還開始から5年後の居住人口の目標を約2000人としています▼しかし、同町住民の意向調査によると、6割が町に戻らないと決めています。医療環境への不安、商店が元に戻るだろうか…理由はさまざまですが、帰還の前提として理由に挙げられている一つが、原発の安全性に対する不安です▼事故の収束も程遠い状況だからでしょう。その第1原発で1号機の格納容器の内部調査をします。1~3号機は事故で炉心溶融(メルトダウン)し、溶け落ちた核燃料デブリは880トンと推定されています。これの取り出しに向けた炉内状況を把握するための調査です▼底部には放射能汚染水がたまり、放射線量が極めて高い過酷な環境。遠隔で操作する何台もの水中ロボットを投入する計画ですが、最初のロボットをいざ格納容器内に投入する前にトラブルが発生し、調査は中断したままです▼廃炉の道のりの困難さはこれからも。なのに、原子力を「グリーン成長戦略」だとか「クリーンエネルギー戦略」で位置づける現政権。事故への反省が見られません。

(「しんぶん赤旗」2022年1月24日より転載)