日本共産党嶺南地区委員会 > しんぶん赤旗 > パレスチナ ガザで太陽光発電 初の女性技術者活躍・・多様性が社会を発展させる 性別で縛る考えに立ち向かう

パレスチナ ガザで太陽光発電 初の女性技術者活躍・・多様性が社会を発展させる 性別で縛る考えに立ち向かう

太陽光パネルを設置するための作業をしているガダ・カリームさん(右)=2021年6月パレスチナ自治区ガザ地区(本人提供)

 パレスチナのガザ地区で太陽光発電の分野における初の女性技術者として活躍する若者がいます。彼女たちはこれまで男性中心だった職業で、困難に見舞われながらも道を切り開こうとしています。(カイロ=秋山豊)

 本紙の取材に応じたガダ・カリームさん(20)は、住宅や工場などに太陽光パネルを設置する会社に勤めています。約20~40キログラムのパネルを電動ドリルや溶接機を使って組み立てます。毎朝8時から午後7時ごろまで働いています。

 「帰宅すると母が私の大好物をつくってくれています。毎日、母の手料理で元気がでます」

 ガダさん家族は1948年、イスラエル建国に伴い、故郷のヤファを追われ、ガザに逃げ込んだ難民です。

差別の壁こえ

 ガダさんは高校卒業後、2019年に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職業訓練所が新設した太陽光エネルギーコースに入りました。ガダさんを含め27人の女性が、約1年半の訓練を受けました。

 ガダさんは、会社を起こし経営者となるのが夢。失業率の高いガザで注目したのが、気候変動が脅威となるなか、世界規模で求められている再生可能エネルギーの分野です。ガザの雇用増加につながると考えました。

 しかし、女性差別の壁にぶつかります。

 「女がネジとドライバーを持って働けるのか」「男でさえ仕事がない時に、女が仕事に就けるのか」。周囲から心ない言葉が浴びせられました。

 ガダさんは、あきらめずに技術習得に専念しました。「自分のやりたいことが分かれば、自ら学び、訓練し、改善することで目標を達成できます。そのことを若い女性たちに示したい」

 ガダさんは昨年、訓練を修了し、この分野でガザ初の女性技術者の一人となりました。

 ガダさんは「女性だけの成功、男性だけの成功というものはありません。女性も男性も一緒に社会をつくっています。だからこそ、それぞれの能力を認め合う必要があります。多様性が社会を発展させるのです」と語りました。

太陽光パネルの前に立つラマハ・アルブハイシさん=2021年、8月パレスチナ自治区ガザ地区(本人提供)

母親の励まし

 別の会社で働くラマハ・アルブハイシさん(20)は、新しい体験にチャレンジしてみたいとこの道を選びました。しかし訓練生のころは、重い道具を運び、汚れた服を着ている自分の姿に、なぜこんなことをしているのかという迷いも生まれました。そんな時、母親が、世界では女性が多くの分野で活躍している、続けることで夢がかなう、と励ましてくれました。

 イスラエルの封鎖政策で、ガザには発電用の燃料が十分入ってこないため、1日10時間以上も停電します。

 「私たち女性は停電の解決策を示す役割を担っています。これはイスラエルへの平和的な抵抗でもあります」とラマハさんは言います。

 昨年5月、イスラエルと、ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによる大規模な戦闘が起きました。

 ラマハさんは、イスラエル軍の空爆でガザが破壊される光景を目の当たりにし、精神的苦痛で作業ができない時期もありました。それでも、こう言い切りました。

 「私は自分には困難に挑む力があると証明してきました。イスラエルによる封鎖にも、女性を縛りつける考えにも、自分を信じて立ち向かいます」

 

 

パレスチナのガザ地区

 地中海に沿って約50キロ、内陸側に向かって約5~8キロの細長い地域。人口約200万人の7割が難民。イスラエルは1967年の第3次中東戦争でガザを占領しました。 2005年、イスラエル軍と入植者がガザから撤退。しかし、イスラエル軍はガザを包囲し、人や物の出入りを極端に制限しています。そのため、ガザは「天井のない監獄」と呼ぱれています。失業率は約50%。

(「しんぶん赤旗」2022年1月21日より転載)