欧州連合(EU)の行政を担う欧州委員会は1日、原子力発電と天然ガスを地球温暖化対策に貢献する「グリーン」な投資先だと一定条件下で認定する草案を加盟国に提示したと発表しました。これに対し、脱原発を目指すドイツやスペイン、オーストリアから反対の声が相次いでいます。(桑野白馬)
草案は、2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロ実現に原発と天然ガスが必要だと明記。気候変動対策に役立つとする「EUタクソノミー(分類)」に追加するとしています。
欧州委は昨年4月、投資家や企業に一定の評価基準を与え、脱炭素への投資を促すためだとしてタクソノミー案を発表。その際、賛否が割れていた原発と天然ガスの扱いについては決定を先送りしていました。
オーストリアのゲウェッスラー気候変動相はツイッターで、草案は気候変動対策を講じるふりをした「グリーンウオッシュ」だと批判。原発や化石燃料由来の天然ガス使用は「気候や環境に有害で、子どもの未来を破壊する」と指摘しました。「計画が実行されれば訴える」と、法的措置を取る構えを示しました。
脱原発を掲げるスペインのリベラ副首相(環境保護担当)は、原発が「グリーンでも持続可能でもない」と指摘。温室効果ガス排出量実質ゼロの実現に「誤った合図を送る」と指摘しました。
22年末に脱原発を目指すドイツのレムケ環境相は独メディアグループに対し、原子力は「壊滅的な環境破壊をもたらす恐れがある」と指摘。原発利用を温暖化対策に位置付けるのは「絶対に間違っている」と強調しました。
一方、原発が発電量の約7割を占めるフランスや、原発導入計画を進めるポーランドはタクソノミーに原発を加えるよう求めています。
欧州委は、加盟国の意見を求め、月内にも正式案を公表する予定。加盟国で構成する理事会や欧州議会が承認すれば施行されるものの、ドイツやスペイン、オーストリア、デンマークなどが反対しており、内容は修正される可能性があります。
(「しんぶん赤旗」2022年1月4日より転載)