東京電力福島第1原発事故から10年だった2021年は、自民党・公明党政権の原発への執念と事故への責任放棄が一層あらわになりました。同時に、原発に固執することに未来がないことが浮き彫りになった1年でした。
成り立たない合理化論
岸田文雄内閣は、10月22日に閣議決定した「第6次エネルギー基本計画」で原発を使い続ける姿勢を露骨に示しました。原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、30年度の電力の2割を担うという目標を維持するとし、50年に向け「必要な規模を持続的に活用する」と明記しました。
電力の2割を原発で賄うためには30基近くの稼働が必要となります。現状は、再稼働にこぎつけたのは10基で、福島原発事故後の電力構成では最大6%(19年度)にすぎません。再稼働を進めるため、経済産業省幹部が新潟県、福井県など原発立地県に何度も足を運んできましたが、それでも進まないのが実情です。
岸田内閣は、「気候変動対策」を口実に原発推進を合理化しています。しかし、ひとたび重大事故にいたれば、広範な地域で放射能汚染という深刻な環境破壊が引き起こされます。福島原発事故を真摯(しんし)に受け止めるなら、環境対策を口実に原発を推進するなどあってはならないことです。
原発は低コストだとされてきましたが、基本計画策定にあたり経産省が行ったコスト試算では、太陽光発電や風力発電より高コストとなりました。事故被害に対する賠償を考慮すれば、原発のコストは青天井です。原発推進の合理化論は、いずれも成り立つものではありません。
一方、九州電力は原発運転を優先するため、太陽光発電などを一時的に発電停止させる「出力制御」を繰り返しています。他の電力会社も同様の対応を予定しています。原発は再生可能エネルギー拡大の大きな障害となっています。
福島第1原発でタンク保管されている汚染水(ALPS処理水)について、政府は、海洋放出する方針を4月に決定しました。それを受けて東京電力は12月21日、海洋放出用施設の計画について、原子力規制委員会に審査を申請しました。
「関係者の理解なしには、いかなる処分も行いません」という福島県漁業協同組合連合会への約束をほごにし、10年間積み重ねてきた福島と農林水産業の復興への努力をないがしろにするものです。原発事故の加害者である政府と東京電力が、被害者にさらなる被害を押し付けるなど許されません。
原発をなくす全国連絡会は12月18日に開催した全国集会で、政府と東京電力に対して、「事故を起こした事実と責任を認めること、逃げないこと、忘れないこと、過去のものにしないこと」を求めました。岸田政権は、この声にこたえるべきです。
参院選を確かな一歩に
原発ゼロの決断と再エネへの転換こそ、エネルギーと地球環境の持続可能な道です。先の総選挙では「再生可能エネルギーの拡充により、石炭火力から脱却し、原発のない脱炭素社会を追求する」ことが野党の共通政策となりました。日本共産党は来年7月の参院選が、原発ゼロの日本への確かな一歩となるよう力を尽くします。
(「しんぶん赤旗」2021年12月31日より転載)