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“アンモニアでCO2減”は本当か・・わずかな削減 膨大なコスト

燃料アンモニアの潜在的需給国との連携。燃料アンモニアの供給量確保のためにロシア、豪州などのサプライチェーン(供給網)構築に向けた連携をうたっています=資源エネルギー庁の資料から

 石炭火力発電は、二酸化炭素(CO2)排出が多いことから、気候危機対策として段階的廃止が国際的に議論になっています。岸田首相は所信表明演説でも、アンモニアや水素の利用によって「火力発電のゼロエミッション(CO2排出ゼロ)化」を推進すると表明。石炭火力発電でアンモニアを利用する計画が進められていますが、その問題点を見てみました。(松沼環)

石炭火力延命の免罪符

 日本のCO2総排出量は、19年度で約11億トンです。石炭火力発電のCO2排出量は2億6200万トンと日本全体の4分の1近くを占めていますが、総発電電力量に占める発電量割合は約32%です。

製造時にCO2

 アンモニアを燃料に混ぜることで石炭火力発電から出るCO2の発生を低減させようという複数の計画が進められています。アンモニアは燃焼時に窒素酸化物は発生しますが、炭素を含まないことからCO2は出ません。

 今年6月からは、国内最大の火力発電会社のJERA(東京電力と中部電力の共同出資企業)が碧南火力発電所(愛知県)の4号機(100万キロワット)で、石炭とアンモニア混焼への実証試験を開始。24年度にアンモニア20%混焼を目指す計画です。

 100万キロワットの石炭火力発電所からは年約500万トンのCO2が排出され、20%混焼で年約100万トンの削減が期待されます。

 しかし、一般的にアンモニアは、化石燃料から製造されており、製造時にCO2が発生します。経済産業省の資料によると「最新鋭の設備においてもアンモニア1トンの製造に対して1・6トンのCO2を排出」とあります。

 混焼で石炭火力発電のCO2排出を100万トン削減する場合、発電効率が変わらなければ、約49万トンのアンモニアが必要です。製造時に排出されるCO2は約79万トンとなるため、20%混焼では排出削減は約4%にしかなりません。

 再生可能エネルギーを利用してアンモニアを作る方法もありますが、現在ごく小規模にとどまります。電力会社などが進めている計画の多くは、海外の化石燃料から製造したアンモニアを調達する前提で進められています。

 CO2を回収・貯蔵または利用する技術が実用化されなければ大量の排出が続くことになります。しかし、これらの技術はコストも高く、適地の有無など大規模な導入には課題があります。

解決策にならず

 さらに問題があります。日本の原料用アンモニア消費量は年間108万トン、うち海外からの輸入は23・5万トン。100万キロワットの石炭火力1基で20%混焼を1年間実施するのに必要なアンモニアは、日本の年間輸入量の倍以上です。

 政府の2030年におけるエネルギー需給の見通しでは、発電部門へのアンモニア調達量を300万トンとして、水素発電と合わせて発電量の約1%を見込んでいます。この場合、現在の日本のアンモニア消費量の約3倍を新たに調達することを意味し、新たに巨大なアンモニア製造、輸送産業が必要になります。

 産業革命前と比べて平均気温上昇を1・5度未満に抑えるためには、30年までに温室効果ガスを10年比で45%削減し、50年までに実質ゼロが求められています。先進国は30年までに石炭火力の廃止が求められています。

 気候ネットワーク理事・国際ディレクターの平田仁子さんは、アンモニア混焼について「石炭火力発電からのCO2排出量を数%しか削減できない技術の導入は、30年までに石炭火力をゼロにすることと比べ、相いれない削減スケールです。CO2を回収して地中に埋める技術が30年までに実用化し、石炭火力からの排出分を全部回収、処理できるようになることはまず見込めず、石炭火力発電の延命策にしかなりません。しかも非常に膨大なコストがかかります。その間、石炭を燃やし続けることになり、気候変動に対応する解決策にならないのは明らかです」と話します。

(「しんぶん赤旗」2021年12月9日より転載)