東京電力福島第1原発事故をめぐって国と東電に損害賠償などを求めた集団訴訟。福島、群馬、千葉、愛媛の4件で高裁判決が出され、訴訟は最高裁に。その原告らによる会見がありました▼事故から10年以上たっても、裁判を続けなければならない―。愛媛訴訟の原告・渡部寛志さん(42)が話していました。「いまだに多くの人を苦しめた原発事故の原因の所在が明らかにされない、真相究明できないなんて」▼第1原発から北へ十数キロの福島県南相馬市の農家で生まれ育ち、事故で愛媛県に家族と避難。提訴は7年前で、高裁判決は今年9月でした。津波到来の危険性を認識できたのに、規制権限を行使しなかった国に対し「合理性を欠く」と、国の責任を認めた判決でした▼また、「国が原発を基幹電源として位置付け、原子力政策を積極的に推進してきた」ことも挙げ、賠償責任の範囲を限定しませんでした。取るべき対応をしなかった東電の過失の程度も「相当程度に重い」と断じました▼その東電。「最後の一人まで賠償貫徹」などの「誓い」を表明しておきながら、法廷では“東電は賠償金を払い過ぎている”“自主的避難等対象区域に損害はない”などの主張をしていると原告弁護団。被害を抑え込むキャンペーンだと批判します▼裁判の行方は被害救済のあり方など当事者にとどまらない問題とつながります。渡部さんは「これから社会をつくっていく子どもたちを失望させない、公正な最高裁の判断を得たい」。行動は続きます。
(「しんぶん赤旗」2021年11月24日より転載)