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伊方運転差し止め却下 広島地裁・・たたかい諦めない 住民・弁護団が決意

 四国電力伊方(いかた)原発3号機(愛媛県伊方町)の安全性に問題があるとして、広島県と愛媛県の住民計7人が運転差し止めを求めた仮処分申請で、広島地裁(吉岡茂之裁判長)は4日、申し立てを却下しました。

 地裁前で待ち構えた支援者らは、「伊方3号機差止ならず」の旗にため息をこぼしました。

 吉岡裁判長は、四国電力に超過地震発生の危険性を疎明させるのは相当でないとした一方、住民らに疎明責任があると判断。さらに、原発運転の差し止めの仮処分を命じるには、「本案訴訟(差止訴訟)の判決確定を待つ暇がないほど具体的危険性が差し迫っている事情などが必要だ」としました。

 不当な決定を受けて、伊方原発運転差止広島裁判弁護団は同日、声明を出し、即時抗告すると発表しました。

 声明では、「裁判所は、いたずらに複雑な科学技術論争を持ち込み、一知半解な理由でわれわれの主張を退けた。誠に不当な決定である」と厳しく批判し、「到底容認できない」と訴えています。

 申立人の一人、綱﨑健太さんは「非常に残念」だとしつつ、「まだたたかいを終わらせるわけにはいかない。これからもあきらめずたたかい続ける」と表明。河合弘之弁護団長は、決定が最高裁判決を正面から否定していると告発し、「到底、許すことのできない決定だが、一喜一憂することなく、粛々とたたかいを進めたい」と述べました。

地裁前で「伊方3号機差止めならず」の旗を出す支援者=4日、広島市

司法判断を放棄 弁護団声明

 四国電力伊方原発3号機の運転差し止めの仮処分申請を却下した広島地裁の決定は、原子力規制委員会の審査に合格した原発の安全性に対する主張を裁判所が判断することについて、高度な最新の科学的、専門技術的知見を裁判所が持ち合わせていないことを理由に「相当でない」としました。

 これに対し住民側弁護団声明は「原発について司法がその安全性を判断することを放棄したものであって到底容認できない」と指摘。住民側代理人の河合弘之弁護士は「規制委の許可が出されたら裁判所が改めて判断することは無理と言っている」と批判します。

 さらに決定は、伊方最高裁判決(1992年10月29日)の民事訴訟への適用を否定し、説明責任を住民側に課しています。

 伊方最高裁判決は、住民が国の設置許可の取り消しを求めた行政訴訟。データなどを有しない住民側に代わって、被告の国が原発の安全について「主張立証の必要」があると明示し、以降の多くの原発訴訟で国や事業者側に立証責任を課す根拠になっています。

 ところが今回の決定は、伊方原発で想定される地震の揺れ(基準地震動)に関して、専門的で詳細な分析に基づく評価を繰り返し住民側に求め、それらが示されていないからと基準地震動を上回る地震の発生について「具体的危険があるとは即断できない」と、住民側の主張を退けています。弁護団が「不可能事を住民側に押しつけるもの」と批判しているのも当然です。

(「しんぶん赤旗」2021年11月5日より転載)