岸田文雄首相の得意技は“大きな声”を聞く力です。原発推進勢力は、機会あるごとに原発推進を強調。岸田政権は、推進派のキーパーソンを要職に起用しています。
日米首脳会談
7月に公表されたエネルギー基本計画の素案は、2030年度の電源構成に占める原発の割合を20~22%と明記しました。
これに対し、経団連は「リプレース(建て替え)・新増設について明確に記載すべきである」と主張。「エネルギー基本計画の次の改訂(第7次)を待つことなく、カーボンニュートラル(脱炭素)の実現を見据えた原子力の継続的活用のあり方について、正面から議論すべきである」とハッパをかけています。
日本原子力産業協会会長の今井敬氏(経団連名誉会長)も4月の年次大会で、原発の積極的な活用を前提に、核燃料サイクルの早期確立や高レベル放射性廃棄物の処分事業などを進める必要性に言及しました。
菅義偉前政権下で行われた4月の日米首脳会談では、革新原子力などの技術革新をめぐり協力を強化することで合意。今月7日には、日米の大手企業で構成する日米財界人会議が、「小型モジュール炉を含む革新的な先端原子力技術の研究開発と廃炉協力を継続する」との共同声明を出しました。
建て替え意欲
「温暖化対策のために原発に一定割合は頼らなくてはいけないとしたら、より技術の進んだもので置き換える発想はなければいけない」
甘利明自民党幹事長は日本経済新聞のインタビューで、原発の革新炉への建て替えに意欲を示しました。(13日付)
初入閣した山際大志郎経済再生担当相も、最長60年までとする原発の運転期間上限の廃止に言及しています。
原発政策を担う経産相に就任した萩生田光一氏は、「脱炭素には原発が欠かせない」として、活用する方針を明言しました。
官邸の陣容も原発推進派が占めています。
岸田首相の政務担当秘書官に就任した元経産事務次官の嶋田隆氏は、12年6月から15年6月まで東京電力取締役執行役などを歴任しています。
さらに、安倍元首相の首相補佐官として“安倍1強”を裏で支えた今井尚哉(たかや)氏をエネルギー政策担当の内閣官房参与として再任しました。
今井氏は原子炉メーカーの三菱重工業の顧問でもあります。
日本共産党は「気候危機を打開する2030戦略」で、30年に原発の発電量をゼロとする目標を掲げます。
東日本大震災から10年。原発事故の惨禍を二度と繰り返さないために、脱原発を目指す日本共産党の躍進が必要です。(小村優)
今井敬 日本原子力産業協会会長
(原発の)新増設・リプレースが明確に位置づけられる必要がある。原子燃料サイクルの早期確立や高レベル放射性廃棄物の処分事業なども、着実に進めていかなければ(4月13日第54回原産年次大会所信表明)
経団連
(原発の)リプレース・新増設について明確に記載すべきである。エネルギー基本計画の次の改訂を待つことなく、カーボンニュートラルの実現を見据えた原子力の継続的活用のあり方について、正面から議論すべきである(10月4日エネルギー基本計画案パブリックコメント募集に対する意見)
日米首脳会談
革新原子力等の分野を含むイノベーションに関する協力の強化により、グリーン成長の実現に向けて協働することにコミットする(4月16日会談の付属文書「日米気候パートナーシップ」から)
日米財界人会議
重要な低炭素ベースロード電源である原子力の利用に関する議論を行い、受動的安全システムや小型モジュール炉を含む革新的な先端原子力技術の研究開発と廃炉協力を継続すること(10月7日第58回会議・共同声明)
岸田内閣
岸田首相
原発も選択肢の一つとして認めている。まずやるべきことは再稼働だ。その次に出てくるのが原発の使用期限の問題。古い原発を使うのであればリプレースをする必要があるのではないか。議論した上で方針を決める(10月18日与野党9党首討論会)
今井尚哉 内閣官房参与
2030年、2040年、2050年と、安全性が進化する軽水炉で少しずつリプレースしながら電源構成上20%程度を維持し、次世代原子炉、核融合炉へとつないでいく必要があろう(3月10日キヤノングローバル戦略研究所コラム)
嶋田隆 政務担当秘書官
2012年6月~15年6月まで東京電力取締役執行役
山際大志郎 経済再生担当相
政府のエネルギー基本計画案について「原子力はゼロにならないことを今回宣言した」と述べ、原発の運転期間上限の廃止に言及(7月28日付「電気新聞」)
甘利明 自民党幹事長
原発の小型モジュール炉(SMR)は是とするが、建て替えはだめだというのはよく意味がわからない。温暖化対策のために原発に一定割合は頼らなくてはいけないとしたら、より技術の進んだもので置き換える発想はなければいけない(10月13日付「日経」)
萩生田光一 経産相
安定かつ安価な電力供給や気候変動問題への対応を考えれば、安全確保を大前提とした原子力の利用は欠かせない。地元の理解を得ながら、安全最優先の再稼働を進めていく(10月5日報道機関の就任インタビューで)
(「しんぶん赤旗」2021年10月21日より転載)