農民連 再発防止へ責任追及
東京電力福島第1原発事故による農業被害をめぐり、東電が請求者によって賠償額の算定を変え、低額の賠償を押し付けていたことが、福島県農民運動連合会(福島県農民連)の告発で明らかになりました。その実態をみてみると―。(内田達朗)
しかし東電は、農民連など個別に請求した農業者に対して、JAを通じて団体請求をした人より半分程度にしていました。例えば、ブドウの場合、本来218%となるはずが、100%とされていました。
ナシ専業農家の阿部哲也さんの場合、新しい方式で賠償額がこれまでの5分の1にまで減ってしまいました。「新しい方式ではなぜこの金額になるのか過程が不明だ。加害者がこんなやり方をするのは理不尽そのものだ」と批判します。
27日の交渉で、東京電力ホールディングス福島原子力補償相談室中央・団体相談グループの平澤朋部長は「農民連の指摘の通り」として「指数」が誤りであることを認めました。ブドウについては、2020年8月から12月まで100%としていたものを213~351%とし、算定し直して支払うと回答しました。
日本ナシ「豊水」の20年10月の場合、係数100%では15万1280円だった賠償額は、207%で62万7440円となります。(表参照)
根本会長は「明白な不正だ。“この数字でいく”と決裁したのは誰か」と要求。平澤氏は回答を拒み続けたため、根本会長は「誰に責任があるか明らかにしなければ、再発は防げない」と批判しました。
佐々木事務局長は、重大な事態にもかかわらず東電も経産省も公表していないとし、「不誠実であることが改めて明らかになった。こんな姿勢では、とても再発防止ができるとは思えない」と強調しました。
監督官庁である経済産業省資源エネルギー庁の戸塚悠二原子力損害対応室室長補佐は、東電からの報告はなく「農民連の申し入れ書を見て事態を知った」と述べ、無責任な姿勢を示しました。
根本会長は「私たちが指摘しなかったら、やみへ葬られていた」として徹底究明と完全賠償を求めました。
(「しんぶん赤旗」2021年10月1日より転載)