中長期のエネルギー政策の方向性を定める「エネルギー基本計画」。いま政府が改定作業中です。現行の基本計画では、原発は「運転コストが低廉」と強調し、再稼働を正当化しています。原発輸出が破たんするなど、「原発は安い」というのはもはや通用しなくなっているのに▼その基本計画の改定に向けた審議会で経済産業省が発電コストの試算を発表しました。2030年時点に新たな設備を建設・運転した場合、太陽光の方が原発より安くなるといいます▼太陽光は技術革新と導入量増加で安くなる一方、原発は安全対策や東京電力福島第1原発事故対応の費用などが増えて割高に。しかも原発のコストは、通常の原発の廃炉や福島原発事故の廃炉・賠償費用などがさらに増える場合の分析は「試算中」で、上限が示されていません▼とはいえ、今後も原発のコストが下がることはないでしょう。処分の見通しもない高レベル放射性廃棄物の問題、収束のめどが立たず、原因究明も終わらない福島原発事故…▼日本学術会議が将来の原発のあり方について発表した提言を思い出します。原発のコストでこう指摘していました。約45年間の日本の原発稼働の歴史で4基の原子炉が過酷事故を起こしたことを踏まえるなら「将来においても過酷事故の可能性を想定しなければならない」▼そして、再稼働させれば、絶えず最新の安全対策が求められ「その額は事前に予測可能なものとはならない」と。どこからみても原発を動かす理由はありません。
(「しんぶん赤旗」2021年7月18日より転載)