被災地の努力、無にしないで
みやぎ生協・コープふくしま、宮城県漁協、宮城県生協連、福島県生協連の4団体は、6月からオンラインで東京電力福島第1原発「アルプス処理水海洋放出に反対する署名」に取り組んでいます。これまで約1500人の署名が集まっています。コープふくしまの野中俊吉本部長に思いを聞きました。(高橋拓丸)
福島第1原発事故後は、海も山も関係なく「福島県産」というだけで流通ができなくなっていました。私たちは10年間、「福島の海産物、農産物はしっかり検査しています、ぜひ買ってください」と全国の皆さんにお願いしてきました。その取り組みを全国が応援し支えてくれたんです。福島県産のモモやリンゴが売れなくなり、生協と農家さんと一緒に「安全ですよ」とアピールし続けて、少しずつ売り上げや販路を回復させてきました。
処理水を海洋放出してしまえば、全国の生協、消費者の皆さんにこれまでお願いしてきたことが、同じようにお願いできなくなってしまいます。
日本全体に
誰も意図せぬ原発事故で、被災地は放射能汚染にどう向き合えば生きる誇りと生業(なりわい)を取り戻せるか、こん身の努力を重ねてきました。処理水の海洋放出は、被害が出ることを分かっていてこれから起こす確信犯的なものです。
第1次産業だけでなく、環境やレジャー産業など、日本全体に悪影響を及ぼします。韓国は事故後、今も日本産ホヤの輸入を止めており再開のめどもたっていません。海外からすれば、「福島県」どころではなく「日本産」というだけで避けられている。これが今後さらに30年40年と続くというのが、今回政府が決めた方針です。
福島第1原発の廃炉は2050年代までかかるとされていますが、その経過は今回の海洋放出とは無関係です。汚染を広げるだけなのに、政府はまるで海洋放出によって廃炉が一歩前進するかのような誤解を起こさせようとしています。
選択肢ある
海洋放出しても処理水の発生量が、処理水の放出計画量を上回る計算になるので、タンク増設や補修作業は必要になります。現在ある水量121万トンを海洋放出でなく地中埋設するなら福島第1原発敷地の12%程度で済むことなど、海洋放出のほかの選択肢はメディアや検討会で指摘されています。
放出が始まるまであと2年あります。海洋放出してはいけないという思いは、いろんな個人や団体で持っているはずです。その意思を表明できる場が必要だと思い、オンライン署名の呼びかけを始めました。
生協では、6月7月、8月9月と全国で海洋放出問題と放出反対署名についてオンライン学習会を行い、署名の告知と案内を進めています。
オンラインだけでなく、用紙を使った直筆の署名も行っているので、ぜひ広い協力をお願いします。
(「しんぶん赤旗」2021年7月5日より転載)