関西電力が、運転開始から44年を超える美浜原発3号機(福井県美浜町)を再稼働させました。2011年の東京電力福島第1原発事故後の法改定で、運転期間を原則40年と定めて以降、それを超える原発の再稼働は初めてです。未曽有の大事故を踏まえてつくられたルールが骨抜きにされていることは重大です。老朽化によって危険性が高まっている原発の再稼働に固執し、国民の安全をないがしろにするやり方は許されません。
「原則40年」を骨抜きに
原発の運転期間について、12年に改定された原子炉等規制法は、原則40年とする一方で、原子力規制委員会が認めれば1回限り最大20年の延長を認める道も残しました。ただ、このケースは「極めて例外」とされてきました。
しかし、規制委は、電力会社からの延長申請をそのまま認可しています。美浜3号機だけでなく、関西電力の高浜原発1号機、同2号機(福井県高浜町)と日本原電の東海第2原発(茨城県東海村)と、40年超の原発の運転を次々と合格させたことは大問題です。
美浜3号機の再稼働について関電や経済産業省の中からは「高浜再稼働に生かしたい」「他の高齢原発稼働の弾みになる」などの声が出ていると報じられています。今後40年を超える他の原発で運転延長に向けた動きも出ています。
原発は運転期間の長短にかかわらず、ひとたび事故を起こせば甚大な被害を招くことは10年前の福島第1原発事故で明らかになっています。ましてや、この大事故の後に決められた「原則40年」まで形骸化させ、老朽原発の運転を常態化させることは、周辺住民をはじめ国民をいっそうの危険にさらす暴挙というほかありません。
機器の交換などが行われても、原子炉本体を取り換えることはできません。炉心から出る中性子線の照射によって原子炉圧力容器の鋼鉄の壁が次第にもろくなる「脆化(ぜいか)」も深刻です。老朽化し酷使されている原発ほど、事故時に、緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動して冷却水が注入されたときの衝撃で圧力容器が割れる危険性などが高いと指摘されています。
美浜3号機の運転開始は1976年12月です。古い技術水準で設計されたことのリスクについて懸念も消えません。耐震補強などがされても、つぎはぎだらけです。
菅義偉政権が40年超の原発再稼働に力を入れているのは、気候変動対策で原発に依存する立場を崩していないからです。
自民党内や財界から相次いでいる原発新増設というあからさまな要求は、原発反対世論が強い中で実現の見通しはたっていません。そのため、既存の原発を可能な限り長く使おうというのです。事故になれば暮らしや環境に計り知れない大きな打撃を与える原発に頼ることを気候変動対策として正当化することはできません。
エネルギー政策の転換を
原発は安全対策費が多くかかることをはじめ高コストが浮き彫りになっています。原発に固執するエネルギー政策が、再生可能エネルギーの普及にとって障害にもなっています。原発推進から決別してこそ、再エネ中心に切り替えることができます。
再エネを飛躍的に拡大する政策への転換のためにも「原発ゼロ」の決断が急務です。
(「しんぶん赤旗」2021年6月28日より転載)