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美浜3号機再稼働強行・・運転開始44年の老朽原発

関西電力美浜原子力発電所3号機=福井県美浜町

 運転開始から40年を超えた老朽原発・関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)は23日、再稼働しました。東京電力福島第1原発事故後、原発の運転を「原則40年」と限るルールが設けられて以降、これを超える再稼働は初めて。

 同原発は1976年12月に運転開始し、今月末で44年7カ月になります。福島第1原発事故後は10年間停止していました。

 原発は運転期間が長くなるほど、炉心から出る中性子線を浴びる原子炉圧力容器の鋼鉄がもろくなり、機器の設計の古さなど、事故の危険性が高いと指摘されています。美浜原発3号機は2004年に2次系配管が老朽化による減肉で破損し、高温高圧の蒸気が噴出し、11人が死傷する事故を起こしています。

 避難計画の策定が義務づけられている半径30キロ圏内には滋賀、岐阜を含む3県10市町村に約27万9000人が暮らし、複合災害や、原発が集中立地する福井県で同時多発事故の危険性など避難計画の実効性が問題になっています。同県内ではほかに3基の原発が現在、運転中です。

 3号機は7月27日に営業運転に入る予定。しかし、新規制基準で設置が義務づけられたテロ対策施設(特定重大事故等対処施設)が完成しないため、設置期限の10月25日までに運転を停止。そのため運転期間は約4カ月になります。

 12年に改定された原子炉等規制法では、原発の運転期間は原則40年とされ、原子力規制委員会が認めれば、1回に限り最大20年の延長が認められますが、延長申請した原発はすべて認可され、「原則40年」は形骸化しています。

解説 美浜3号機再稼働強行・・新増設見通せないなか酷使

 老朽原発の再稼働は安全性のみならず、経済性でも問題があります。

 関電は、美浜原発3号機の新規制基準に対応するための費用の見通しについてテロ対策施設を含め約2700億円に上るとしています。

 美浜原発3号機の運転期間は36年までと、あと15年ほどです。さらにテロ対策施設が間に合わないことから、10月25日までに冷温停止することが決まっています。関電はテロ対策施設の完成時期は未定としていますが、19年に規制委に示した見通しでは、期限を1年半程度超過するとしており、運転期間はさらに短くなります。

 使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設の問題では、当初、福井県は老朽原発の再稼働議論の前提として、施設の県外候補地の提示を求めていました。関電は今年、候補地を提示できないまま、選定を23年末までと先送り。候補地として青森県むつ市内の施設を電力各社と協同利用する計画を選択肢などとしています。しかし、むつ市はこの方針に抗議しており、見通しはたっていません。

 原発の40年超運転の背景には、菅政権が、気候変動対策のためと称して原発を使い続けようという姿勢があります。新増設が見通せない中、老朽原発を酷使しようとしています。

 日本共産党の藤野保史衆院議員は国会で、経産省資源エネルギー庁の幹部が19年4月から今年2月26日までに、福井県に110回もの出張を繰り返し、老朽原発の再稼働の地ならしのためだったと指摘しています。さらに、エネ庁は40年超の原発の再稼働に際し、1原発につき最大25億円の交付金を県に約束。老朽原発の再稼働になりふり構わない攻勢をかけました。

 今後5年以内に、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)、関電高浜3、4号機(福井県)、東京電力柏崎刈羽原発1号機(新潟県)も運転40年を迎えます。

 原発は、事故を起こせば深刻な被害を環境や地域にもたらし、使用済み核燃料の問題もあります。さらに、気候変動対策の主流となるべき再生可能エネルギーの促進を阻害します。

 気候変動対策で求められるのは、再生可能エネルギーの大幅な拡大と省エネルギーの推進であり、原発にたよるのは無謀です。

(「しんぶん赤旗」2021年6月24日より転載)