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クローズアップ 原発汚染水放出 悲劇 繰り返すな・・「教訓どこへ」水俣病患者ら抗議

政府の方針決定に抗議する(前列右から)松永さん、長井さん、(後列右から)中山、加藤の両事務局長ら=6日、熊本県水俣市

「海水で希釈」あの時も

 政府が決定した東京電力福島第1原発のトリチウムを含む放射能汚染水の海洋放出方針(4月13日)に対し、水俣病患者らは「悲劇を繰り返すな」と抗議の声を上げています。(大串昌義)

 「海洋放出を平気でやろうとする国のやり方は間違っています。全然水俣病の教訓を学んでいません」

 「水俣病胎児性小児性患者・家族・支援者の会」(熊本県水俣市)代表で胎児性患者の松永幸一郎さん(57)はこう語ります。有害物質の海洋放出や国策の破たんで共通する水俣病を経験した者として看過できないと言います。

人体への影響

 今月1日で公式確認から65年を迎えた水俣病。チッソ工場の排水内のメチル水銀を取り込んだ魚介類を食べた人々が手足のしびれや視野狭窄(きょうさく)を抱え、死に至る人もいました。メチル水銀が原因だといわれた1959年以降もチッソは「海水で希釈される」と流し続け、国も排水と漁獲を禁止しませんでした。

 トリチウムは、魚介類への影響・蓄積、内部被ばくも含めた人体への影響など、過去に大量放出した事例がないため、安全性が確立していません。水俣病では希釈して捨てても生物濃縮によってメチル水銀が人体に影響を及ぼしました。今回の決定について、人体への影響が明確になっていないと水俣病患者は危惧しています。

 同会副会長で胎児性患者の長井勇さん(64)は「汚染水を海に流すのは反対です。僕たちは生まれてからずっと水俣病に苦しんでいます。小さな子どもたちも同じように苦しまんようにしてほしい」と言います。鹿児島県出水(いずみ)市出身で、水俣病患者が広範囲にいることを伝えたいと地域の小学校で講演。同じ魚を食べた母が水俣病に認定されていない矛盾を語っています。

あまりに安易

 水俣病胎児性小児性患者会の加藤タケ子事務局長は「国の暴走を止めるため地道に水俣病を伝え、もっと声を上げていかなければいけない」。水俣病被害者の会の中山裕二事務局長は「国は風評被害が問題だと言うが、人体被害も否定できないのではないか。海洋放出はあまりに安易だ」と話しました。

 「水俣病被害者・支援者連絡会」は4月19日、水俣市で会見しました。松永さんや水俣病不知火(しらぬい)患者会の元島市朗事務局長が出席。「今回の決定に至る手続きの不備、強引さを含めて自然や人体に未曽有の被害をもたらした水俣病の教訓を全く顧みない暴挙である。水俣病において、有害物質の汚染と長期微量汚染が人体に甚大な影響を起こすという経験をしてきた私たちは、同じ過ちを繰り返そうとする今回の決定に断固抗議し、反対するものである」との声明を発表しました。

(「しんぶん赤旗」2021年5月13日より転載)