もろい岩盤 沖合まで分布か はたやま氏が活断層指摘も
北海道積丹(しゃこたん)半島を巡る国道229号の余市、古平(ふるびら)両町を結ぶ旧豊浜トンネルで巨大岩盤が崩落し20人が犠牲となった事故から25年。寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村で原発から出る高レベル放射性廃棄物(「核のごみ」)受け入れの「文献調査」が始まり、事故の要因の一つとされる半島周辺の「地質」が再び注目を集めています。(党国会議員団道事務所・小田一郎)
1996年2月10日、古平町側坑口直上の岩盤がトンネルを押しつぶし、10代~70代の住民や高校生らバス乗客18人と運転者1人、乗用車の運転者1人が亡くなりました。
落下した岩盤は高さ約48メートル、幅約23メートル、奥行約13メートル。総崩壊量約1万1000立方メートルと推定されています。
北海道大学研究グループの事故調査に参加した道立地下資源調査所の山岸宏光氏=当時=は、中間報告概要で事故の地質的な要因として3点を指摘。▽堆積様式の違いで岩相が異なるハイアロクラスタイト(水冷破砕岩)が3層となっている▽上層と中層、中層と下層の各境界部の隙間(不連続面)で水圧や浸食等が誘発された▽地上の線状模様(リニアメント)の亀裂が豊浜付近は「北東―南西」系と「北西―南東」系が発達し、「北東―南西」系は地下水による風化が進んでいた―と分析しています。
「原発問題後志(しりべし)住民の会」が呼びかけ、3月27日、「神恵内は核のごみ地層処分の適地か?地質の特徴から考える」と題した学習会を神恵内村で開きました。
同村や泊原発が立地する泊村などから40人以上が参加。北海道教育大学の岡村聡名誉教授が講演しました。
積丹岳の大噴火で海底火山が隆起したと岡村氏。豊浜トンネルのある古平町と神恵内村を直線で結んだ地下断面図を示し、地層処分施設が建設される深度300~500メートルは、水冷破砕岩などの火山性のもろい岩石が分布し、積丹岳の半径15キロ圏内の大部分を占めると話しました。
寿都町一帯も水冷破砕岩が広がると自身の地質調査資料で説明。太平洋プレートの沈み込み(年9センチ)による「東西圧縮」が道内で岩盤の無数の割れ目を生じさせていると指摘します。
原子力発電環境整備機構(NUMO)は、陸地の直下がだめなら沖合の大陸棚海底下約300メートルに施設建設を検討しているとしています。岡村氏は、水冷破砕岩が海底1000メートル以下まで分布している可能性に言及、「(半島周辺は)陸上・沖合とも地層処分地として不適」と語りました。
質問では、「文献調査を進めるNUMOと違う立場の情報を伝えてほしい」「地層をまわり(現地で)教えてほしい」と期待する声が相次ぎました。
「住民の会」の大石美雪事務局長は「人口約800人の村で反対や不安を声に出すことは難しい。継続して学習会に取り組みます」と表明しました。
北海道電力が自ら出したデータに、原子力規制委員会が活断層の疑いを指摘したと言及し、積丹半島の隆起と地震の関連性から、規制委が「泊原発敷地背後の段丘、つまり半島の掘削(調査)を」行うよう求めました。
小野有五・北大名誉教授 原発敷地内で200年保管を
F―1断層や寿都町「黒松内低地帯」に詳しい「行動する市民科学者の会・北海道」の小野有五北海道大学名誉教授に聞きました。
寿都町は、北海道で一番活動的な「黒松内低地帯」の活断層の上に位置しています。海岸から沖合には、その延長の海底活断層が続いています。
神恵内村には、NUMOの地図でさえほとんど適地がなく、海底に地層処分場を造るしかありません。そうなれば海底活断層の真上で地層処分することになってしまいます。
NUMOは、活断層の長さの100分の1だけ距離を離せば安全と言いますが、18年9月に起きた胆振(いぶり)東部地震は、長さ150キロの「石狩苫小牧低地東縁断層帯」から15キロ(10分の1)も離れた場でした。NUMOの安全基準がまったくあてにならないことが証明されたわけです。
使用済み核燃料は、地上で安全に保管できる技術が確立されています。200年保管すると、放射能の強さもかなり減りますから、少なくとも200年間は「核のごみ」を出した原発の敷地内で各電力会社の責任で地上保管すればいいのです。
(「しんぶん赤旗」2021年4月26日より転載)