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柏崎刈羽行政命令 再稼働の道残す決定・・新潟大学名誉教授 立石雅昭さん 運転資格、検討し直せ

 東京電力柏崎刈羽原発でテロ対策などに重大な不備があったとして原子力規制委員会が14日、東電に対し同原発での核燃料の移動禁止命令を出したことについて、立石雅昭・新潟大学名誉教授に聞きました。

 原子力規制委員会が東電に柏崎刈羽原発での核燃料の移動を禁ずる行政処分を決定したことで、しばらく再稼働できないということになりましたが、東電が同原発を動かす道を残していることが重大です。

 規制委は3月、「核物質防護上、重大な事態になり得る状況にあった」として、問題の重要度を最悪の「赤」と評価したにもかかわらず、行政処分としては最もレベルの高い「設置許可の取り消し」ではなく、核燃料の移動禁止という是正措置命令にしました。しかし、核防護上の不祥事という重大問題でありながら、なぜ規制委は、東電に原発を運転する資格があるとか、技術的能力がないとはいえないとした2017年暮れの判断をもう一度検討し直すことをしないのか。結局、再稼働の道をなんとか残したいのではという疑念がぬぐえません。

 多くの県民には東電に原発を動かす能力があるのかという不安が高まっています。これは先延ばしにしていい問題ではありません。そこをあいまいにしたまま、行政処分を出すだけでいいという話ではないと思います。

 規制委は東電に「自律的な回復を望める」と認められれば命令を解除するとしています。しかし、東電はトラブルのたびに改善策や再発防止策を公表してきましたが虚偽や隠ぺいを繰り返し、守ってこなかった実態があります。同じ構図を繰り返してきた東電を容認してきた規制委の姿勢も問われていると思います。

東京電力柏崎刈羽原発=2017年、新潟県

解説 柏崎刈羽行政命令 再稼働の道残す決定 資格ないこと明らか 政府の方針撤回を

 東電は、今年1月には柏崎刈羽原発の再稼働に向けた「安全」対策工事が完了したと発表し、年内の再稼働を狙っていました。しかし、その直後に、社員がIDの不正使用で中央制御室に侵入したことが発覚。一部工事の未完了も次々に見つかり、さらに侵入検知設備の故障が放置されていたことが明らかになりました。いずれも、セキュリティーと安全を損なう深刻な事態です。

 侵入検知設備の問題では、東電の牧野茂徳原子力・立地本部長は会見で、不十分とされた代替措置について「慣例に基づいてやってきた」と答えており、このような事態が長年にわたり繰り返されてきた可能性があります。

 福島第1原発でも、トラブルや不備が最近も繰り返されています。3号機建屋の地震計が故障したまま放置され、今年2月の最大震度6強を記録した地震で建屋の劣化を評価するためのデータが取れませんでした。

 規制委は今回、事実上、柏崎刈羽原発の運転を禁止する措置命令を出しましたが、この事態は、東電に原発を運転する資格がないことを改めて示しています。

 柏崎刈羽原発での安全性を軽視したトラブル多発の背景には、再稼働を急ぐ経営の姿勢があります。政府が認可した東電の経営方針「新々・総合特別事業計画」は、柏崎刈羽原発の再稼働による収益性の改善を掲げています。また、国は東電の株式を売却することで、福島原発事故に伴う除染費用を回収しようと計画しています。

 資源エネルギー庁長官や経産省幹部らが昨年1月から80回以上も新潟県入りしていたことが、日本共産党の藤野保史衆院議員に経産省が提出した資料から判明しています。政府が率先して同原発の再稼働を画策していました。

 菅義偉首相は3月19日の参院予算委員会で、日本共産党の山下芳生議員への答弁で「東電の組織の体質や原発を扱う資格にまで疑念をもたれてもやむを得ない」と述べました。そうであるならば政府は、柏崎刈羽原発の再稼働という方針を撤回すべきです。(松沼環)

(「しんぶん赤旗」2021年4月15日より転載)