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福島第1原発 汚染水 アルプス処理7割が未完了

 菅義偉政権が決定した、東京電力福島第1原発事故で出た高濃度のトリチウム(3重水素)を含む汚染水(アルプス処理水)を薄めて海に放出する方針。政府は、具体的な方法について示しました。

 同原発では、原子炉建屋に地下水や雨水が流入することで、放射能汚染水が増え続けています。この高濃度の汚染水を多核種除去設備「アルプス」で処理した後に残るのがアルプス処理水です。

 アルプスは、セシウムやストロンチウムなど62種類の放射性物質を国の放出基準(告示濃度限度)未満に低減できるとされますが、トリチウムや炭素14など除去できない放射性物質もあります。

 敷地内のタンクにためた処理後の水は約125万トンで、現在も1日140トン規模のペースで増えています。政府・東電は、設置済みのタンク(137万トン分)が2022年秋ごろにも満杯になると見積もっていますが、タンク増設計画を示さないまま、なし崩し的に放出を決定しました。

 タンクの処理水のトリチウム濃度は、1リットル当たり数十万~数百万ベクレル(平均濃度は同73万ベクレル)。国内の原発では通常運転で発生したトリチウム水を環境中に放出していますが、その際の国の基準(同6万ベクレル)を大きく超えるものもあります。

 事故原発である福島第1では他の放射線の影響も考慮する必要があり、現在、敷地内の地下水をくみ上げて海に放出する際には、同1500ベクレルを基準に運用しています。今回の政府方針では、処理水を薄める際、これと同じ基準で運用するとしています。これは世界保健機関(WHO)の飲料水基準(同1万ベクレル)の7分の1の濃度です。

 タンク内のトリチウムの総量は現時点で約900兆ベクレル。事故前の福島第1での年間放出量は基準(管理目標値)が22兆ベクレル、実績が2兆ベクレル規模でした。今回の方針では放出の総量を「年間22兆ベクレルを下回る水準」としました。

 一方、アルプスで処理した水のうち約7割は処理が未完了で、トリチウム以外の放射性物質濃度が放出基準を超えて残留していることが判明しています。これは基準を下回るまで2次処理すると政府は説明しています。

(「しんぶん赤旗」2021年4月14日より転載)