政府は13日、関係閣僚会議を開き、東京電力福島第1原発で発生する放射能汚染水を処理した後の高濃度のトリチウム(3重水素)を含む汚染水(アルプス処理水)の海洋放出方針を決定しました。今回の決定は、政府と東電が海洋放出に強く反対する漁業関係者に「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と約束したことを覆し、福島県内7割の自治体が反対・慎重対応を求める意見書を採択したことなども無視する暴挙です。
全国漁業協同組合連合会が「到底受け入れられない」と抗議したのをはじめ、「海をこれ以上汚さないで」と抗議や撤回を求める声が国内外で相次いでいます。市民団体などからは、タンクの継続保管など代替案の検討を求める声も出されていました。
菅首相は関係閣僚会議で「処理水処分は廃炉に避けて通れない課題。海洋放出が現実的と判断した」と説明しました。東電に2年程度をめどに敷地から放出できるように準備するよう求めています。
決定した基本方針によると海洋放出は、トリチウムを国の定める基準以下に薄めてから放出するとしていますが、放出されるトリチウムの総量が変わるわけではなく、漁業などへの影響ははかりしれません。
また、風評被害が生じた場合、政府が東電に期間や地域、業種を限定せずに賠償するよう指導すると明記。しかし、本格操業に向けて重ねてきた漁業者らの努力が海洋放出で阻害されかねません。
福島第1原発では原子炉の冷却水や地下水が建屋に流れ込み、放射能汚染水が1日140トン増え続け、アルプス(浄化設備)処理後の処理水は125万トンに上っています。東電は処理水を保管するタンクは来年秋ごろにも満杯になるとしていますが、増設計画がないままです。
原発汚染水放出決定 これ以上、海を汚すな・・撤回せよ 怒る福島
菅政権が福島第1原発から出る放射性物質トリチウム汚染水の海洋放出方針を決定した13日、福島県庁(福島市)前では政府への抗議と県に撤回を求めるよう迫る声が高く響きました。
「これ以上海を汚すな! 市民会議」が主催する抗議のスタンディングに、福島県内の青年らでつくるDAPPE(ダッぺ、平和と民主主義を守る民主主義アクション)や、ふくしま復興共同センターなどが参加しました。
「海洋放出が進めば環境も生業(なりわい)もつぶされ、福島の漁業は終わってしまう」と避難者。福島市の女性は「健康に影響があると思うと我慢できなくて参加した」と訴えます。
「市民会議」のメンバーは、県に海洋放出を拒否するよう求め、県議会各会派へ要請行動も。同会議の武藤類子氏(67)は「原発事故被害者の県民や国民の十分な理解が得られないのに、強行したことに怒っている。内堀雅雄知事は政府の暴挙を止めてほしい」と力を込めました。
復興共同センターの斎藤富春代表委員は、「福島切り捨てが極まった状況だ。理不尽な政府の対応に引き続き大きく運動を進めていく」と述べました。
日本共産党の神山悦子県議は司会者の求めに応じて県政の状況を報告し、「内堀知事は県民の声を受け国に撤回を迫るべきだ」と訴えました。
(「しんぶん赤旗」2021年4月14日より転載)