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原発汚染水処理 復興の前提を壊す・・アルプス小委員会メンバー・福島大学教授 小山良太さん

 東京電力福島第1原発で発生する高濃度の放射能汚染水を処理した後に残る、放射性物質トリチウム(3重水素)を含む「アルプス処理水」をめぐって、政府は、放出基準値未満まで薄めて海に流す方針決定を強行する構えです。昨年2月にアルプス処理水の処分方法について報告書をまとめた政府の小委員会メンバーの小山良太・福島大学教授と、福島の漁業復興に尽力する林薫平・福島大学准教授に聞きました。(中村秀生)

最悪のタイミング

 アルプス小委員会の報告書は、五つの処分方法から選ぶのであれば、過去に実績がある大気や海洋放出が現実的としましたが、海洋放出すれば「社会的影響は特に大きくなる」とも指摘しました。

 それを、政府が決めるのであれば、(1)元の汚染水と処理水との違いやトリチウムについての国民の理解が深まる(2)それを踏まえて地域の漁業者らと対策を協議したうえで合意に向けて努力する(3)今も輸入を制限している周辺諸国に日本政府が説明して理解を得る―という三つの“宿題”を推進する必要があります。

 政府は「決定」するのでなく、被災者・被害者である漁業者たちのために汗を流し、頭を下げて、協力を「お願い」する姿勢が必要です。コロナ禍で対話の機会をつくることが困難だったとは思いますが、今回の決定は一方的に決めて「2年後には海に流す」と受け取られている。こんな話はないと思います。

 廃炉を進めるのは、被災者・被害者の復興のためです。しかし海洋放出すれば復興は遅れてしまう。今回のような「タンクが満杯だから…」という決め方では、復興のためではなく東電の廃炉作業を楽にするためだと受け止められかねません。

 福島の漁業が本格操業を始めて2週間。最悪のタイミングです。なぜ今なのか、被災者が納得できる説明が必要です。報道は新型コロナ問題一色であり、正確な情報が伝わらない。不確かな情報のままで風化が進むと、風評被害が広がってしまいます。その場合、被害を受けるのは漁業者です。被災地の復興のための廃炉政策であること、国民全体の問題であることを強調したい。

(「しんぶん赤旗」2021年4月13日より転載)