東京電力福島第1原発事故から10年が経過した福島の現状や被害者の状況、復興の課題を考える「第5回『原発と人権』全国研究・市民交流集会inふくしま」(同実行委員会主催)が3日、オンラインで開催されました。
実行委員長の磯野弥生・東京経済大学名誉教授は「10年をへた被災者と被災地の問題はますます深刻、複雑になった」と述べ、現状や課題などで情報共有したいとあいさつしました。
基調講演や福島の現状などについて各地から報告されました。
講演で今野順夫・福島大学名誉教授が、廃炉作業での東電の情報公開に対する批判や生活基盤ができていないのに早期帰還を強要するなど復興過程の問題点を指摘。住民・被災者の生活回復を最重要点にした「住民主体の復興への転換が必要だ」と強調しました。
原発避難者の被害実態について話した辻内琢也・早稲田大学学術院教授は福島県から首都圏に避難した住民のメンタルヘルスや経済状況の調査を紹介。今も約4割が心的外傷後ストレス障害(PTSD)の疑いがあり「安全・安心な環境が確保できていない」と報告しました。
廃炉など原発政策のあり方をめぐり、東芝の元技術者で原子力市民委員会の後藤政志氏は、第1原発事故調査で原子力規制委員会が最近まとめた報告を解説。事故のプロセスがわかっていない中で「現在の原発の過酷事故対策は福島事故を反省した上でなされていない」と述べました。核・原子力政策について話した鈴木達治郎・長崎大学核廃絶研究センター副センター長・教授も「福島事故の教訓を日本の政府・電力業界は学んでいない。この点が一番心配だ」と強調しました。
(「しんぶん赤旗」2021年4月4日より転載)