原子力規制委員会は5人の外部専門家を招き9月に「帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム」を立ち上げ会合を重ねています。「場当たり的対応ではだめ」「原発労働者の健康被害をきちんとつかむべきだ」など、原発被害者への支援強化を訴えている外部専門家の星北斗・星総合病院理事長(福島県郡山市)=県医師会常任理事=に聞きました。
(柴田善太)
政府の原発事故による被害者への支援策と、現場が求めていることとの間にギャップがあります。
原発事故直後から何回も何回も要請してきたことですが、住民が検診をどの医療機関でも気軽に受けられるようにするべきです。
たとえば郡山市に避難している双葉町住民の場合、隣に病院があっても集団検診という形で日時、場所を指定され別の場所で検診を受けることになります。市町村ごとに検診を受ける医療機関を決め契約をしているため、どこでも受けられるということにならないのです。
そうすると、その日時の都合がつかなかったり、避難先で地理に不慣れだったりすると「いま具合が悪いわけじゃないし、まあいいか」となってしまいます。
県が市町村間の調整をとってどこでも検診が受けられるようにすればいいのですが、現行法ではそうならない。特区などにしてやるべきだと提案してきましたが、厚生労働省は市町村の事業だから県は余計なことをするなという立場で「特区になじまない」と認めません。県の役割は「広報に努める」どまりになってしまいました。
政府は非常時で迅速で大胆な対応が必要なのに、現行制度を崩すのがいやで動かない。住民の命と健康にかかわる施策より、大型の産業界が喜びそうな施策を先行させたのが実態です。
今からでも遅くない。検診が受けやすい体制をつくるために福島県から出た会合のメンバーとして、「ごまめの歯ぎしり」かもしれませんが、言い続けていきたいと思います。