「東海第2発電所の原子炉を運転してはならない」―。判決が言い渡された瞬間、法廷内は安堵(あんど)の雰囲気に包まれました。
提訴から8年半。首都圏唯一の原発に運転の差し止めを命じる画期的な判決が下されました。
水戸地裁の前田英子裁判長は、周辺人口94万人を抱える同原発の立地性を重大視。原発事故に伴う避難の困難性を強調しました。
判決は原子炉を設置する際の5段階の「安全対策」(「深層防護」)に言及。このうち、放射性物質が大量に放出された場合を想定した第5の防護レベルを達成するためには「実現可能な避難計画と、実効し得る体制が整備されていなければならない」と指摘し、「人口密集地帯の原子力災害における避難が容易ではないことは明らか」と断じました。
また判決は、原子炉の運転により発生した事故は「他の科学技術の利用に伴う事故とは質的にも異なる」と指摘。「深層防護」の一つでも失敗すれば事故が進展し「多数の周辺住民の生命、身体に重大かつ深刻な被害を与えることになりかねない」と主張し、「人格権侵害の具体的危険がある」と述べました。(茨城県・高橋誠一郎)
(「しんぶん赤旗」2021年3月19日より転載)