東京電力福島第1原発事故から10年を迎えた11日、経済産業省の審議会が開かれました。政府のエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」の改定に向け検討をしています▼原発推進派の委員が少なくない同審議会。事故の痛みなどどこ吹く風、国民の声とはかけ離れた再稼働当然論が相次ぎました。“10年たった日であるからこそ”と前置きし、“審査を申請した27基すべてを再稼働させるべきだ”と言い放つ委員まで。事故は起きないという「安全神話」が戻ったようです▼国は「国民の信頼回復」が欠かせないと、「安全性の追求」などを事有るごとにうたいます。ところがそういうそばから、次つぎ国民の信頼を失う事態が露呈しています▼東電が福島第1原発3号機に設置した2カ所の地震計の故障を放置していました。故障は去年でしたが公表もしませんでした。10年前の水素爆発で壊れた原子炉建屋の劣化状況を把握する地震計です。震度6強を記録した先月の福島県沖地震の影響を把握できていないことで発覚しました▼新潟県にある東電の柏崎刈羽原発でも、原子炉を操作する中央制御室の運転員が他人のIDカードを無断使用し、なりすましで制御室に入り、警備のずさんさを示しました。昨秋に報告を受けながら、原子力規制委員会が明らかにしたのは1月でした▼地震と津波で全電源を喪失し、3基が炉心溶融になり、放射性物質をまき散らした事故は、10年たっても収束していません。信頼回復の早道は原発ゼロです。
(「しんぶん赤旗」2021年3月14日より転載)