東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)で起きた社員の不正なID使用による中央制御室侵入問題をめぐって、原子力規制委員会の更田豊志委員長は2月10日の定例会見で、同原発の保安規定を認可した判断に「影響を及ぼす事案ではない」とした一方、「核物質防護上の瑕疵(かし)が安全上の重要なインパクトまで及ぶようであれば、保安規定の議論に及ぶ可能性がある」と答えました。
IDの不正使用による中央制御室侵入は昨年の9月20日に発生しました。東電は翌日に規制委の事務局、原子力規制庁に報告。しかし、委員にはすぐに報告されず、同23日に東電の原子力事業者としての適格性を認める前提として福島第1原発の廃炉をやり遂げることなどを明記した柏崎刈羽原発の保安規定を規制委がおおむね認めました。
一方、更田氏は、8、9日に非公開で開かれた臨時会合で一部の委員から、今回のことが知らされていたら保安規定の判断に「全く左右しなかったかというとそんなことはないのではないか」といった意見が出されたことも明かしました。
規制委は、この日の定例会で規制庁から委員への情報伝達やセキュリティー問題の情報公開のあり方を検討するよう規制庁に求めました。
規制委はまた、柏崎刈羽原発の対応区分を「2(監視領域の軽微な劣化)」に引き上げ、東電に対して改善措置活動の計画と実施結果を3月10日までに報告するよう求めました。対応区分は通常の状態「1」から「5(許容できない管理状態)」の5段階。昨年に検査制度が変更されて以降、初めての対応区分2の判定。規制委は東電が報告提出後に追加検査を実施する予定です。
同原発で設置が求められているフィルターベントの部品の一部に、事前に実施する必要があった試験が未実施だったことも報告されました。
(「しんぶん赤旗」2021年2月12日より転載)