きょうの潮流

 東京電力福島第1原発事故から10年になろうとしていますが、事故の原因究明は終わっていません。原子力規制委員会がまとめた調査や分析結果の中間報告書でも明らかです▼事故の経過でこれまで不明だったことがわかったといいます。たとえば原子炉建屋の水素爆発。テレビの映像を見た時は衝撃でした。今回の調査で、3号機の爆発は多段階の現象だったと分析しました▼メルトダウン(炉心溶融)した2、3号機の原子炉建屋5階付近で極めて放射線量が高い場所があることも。それが旧ソ連のチェルノブイリ原発事故より環境中に放出された放射性物質が少なかった理由の一つだとしています▼あくまで人が接近できる範囲の調査です。それでやっとわかってきたのです。報告書は「まだまだ取り組むべきことが山積している」とあります。そんな現状にありながら、菅政権は「安全最優先で」と枕ことばを並べて原子力政策を進めています▼「安全」の担保に政府は「原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準」と宣伝します。しかし、そのほころびは、大阪地裁が昨年、審査がきちんとされていないからと設置許可を取り消したことにも現れました。原発を動かす理由はますますなくなっています▼二酸化炭素を大幅削減するため自然エネルギーを推進する努力が世界の流れ。原発訴訟に関わる弁護士は集会で「日本もそうなる」といい、もし原発事故が起きればすべてが台無しになる、それを避けるため原発をなくそうと。

(「しんぶん赤旗」2021年1月29日より転載)