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温暖化抑制への逆流(3)・・原発依存は変えず

「このまま原子力を活用せずに、他の選択肢で代替しようとすれば、問題をさらに深刻化させる。火力は国富の流出やC02(二酸化炭素)排出増を引き起こす。再生可能エネルギーは課題解消の見通しがなく、基幹電源になり得ない」

エネルギー供給者から意見を聴取した11月12日の経済産業省エネルギー調査会分科会で、電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)は、温暖化対策のためにも原子力発電が不可欠だと主張しました。安倍政権が、温暖化対策の新目標を決める3日前のことでした。

11月16日、ワルシャワ市内をCOP19の会場に向けて行進するマーチ参加者(地球環境と大気汚染を考える全国市民会議のHPより)
11月16日、ワルシャワ市内をCOP19の会場に向けて行進するマーチ参加者(地球環境と大気汚染を考える全国市民会議のHPより)

基準ずらし

新目標は、2020年までの温室効果ガス排出量を05年比3・8%減にするとしています。ところが、05年の排出量は京都議定書の基準年である1990年と比べ7・1%も増えています。削減目標を大きく見せるための姑息(こそく)な基準ずらしにすぎません。新目標を90年比に直すと約3%増になります。

新目標は、09年に麻生政権が決めた05年比約18%削減(森林吸収分含む)と比べても、低い目標です。

環境省の担当者は、「麻生政権の目標は20年のエネルギー割合を原発42%としていた。これは原発50基分に相当する。現時点でそれは考えられない。再稼働申請がでている14基が動けば削減目標を4%程度上積みできる」と説明します。原発再稼働を温暖化対策の条件にしているのです。

電事連の八木会長は、電力の安定供給には原発が必要だとも主張します。しかし、原発はこれまでも事故を繰り返し、安定供給を妨げてきました。

07年の新潟県中越沖地震では、東京電力柏崎刈羽原発が停止。火力発電が増えたため、温室ガス排出量は90年比8・1%増と90年以降最悪になりました。原発頼みのエネルギー政策によって、原発が止まるたびに排出量が激増する仕組みになっているのです。

しかも、福島原発事故の原因も解明されず、多くの人たちが避難生活を強いられています。温暖化問題に取り組む気候ネットは、このような状況の中で「(原発を)温暖化対策の柱にすることは全く現実的ではありません」と批判しています。

危険を輸出

新目標は、国内での原発推進とともに、海外への原発輸出に税金をつぎ込むことを明らかにしています。「原発事故を乗り越え『エース』として目標達成の努力を主導する」というのです。

「エース」とは、安倍政権が掲げる「攻めの地球温暖化外交戦略(Action for Cool Earth)」の頭文字と「第一人者」の意味をかけたもの。戦略を具体化した『施策集』には、公的資金を使った原発輸出促進が盛り込まれています。安倍首相の原発トップセールスを加速するものです。

安倍首相は10月末、5月に続きトルコを訪れ、三菱重工が狙うシノップ原発プロジェクトについて、エルドアン首相と会談。商業契約の大枠合意を実現しました。原子力業界は「国際ビジネスではトップセールスが非常に重要」(佐々木則夫東芝副会長、11月12日衆院経済産業委)と安倍首相の手法を歓迎しています。

安倍政権の逆流が誰のためなのか、いよいよ鮮明です。
(つづく)

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