ワルシャワの国立競技場で開かれている国連気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)は11月22日、閉幕となりますが、資金援助問題をはじめとして先進国と途上国の対立が続いています。(ワルシャワ=浅田信幸)
2009年のCOP15は気候変動に関して先進国が途上国に20年まで年1000億ドル(約10兆円)の支援を行うことを確認しました。しかし、国際援助団体のオックスファムの計算によると、これまでに提供された支援額の合計は76億~163億ドル(約7600億~1兆6300億円)でしかないといいます。
インドのナタラジャン環境相は20日、この資金提供について「明確な行程表が必要だ」として、「われわれはそれなしには前に進めないし、この会議は何の意味もない」と強調しました。
先進国から途上国への資金援助は、気候変動に関して「共通だが差異ある責任」を負っているという気候変動枠組み条約に認められた原則に沿ったもの。その中で、一つの問題として浮上しているのが「損失と損害」への補償メカニズムをめぐる対立です。
温暖化を背景とした異常気象による自然災害とともに、海面上昇による土地の浸食や砂漠化の進行といった長い時間的経過の中で起こる「損失と損害」にも先進国は責任を負うべきだという考えから出たものです。
前回のCOP18では「国際的メカニズムを含む何らかの制度的取り決めに合意する」ことが確認されましたが、先進国側は新たな資金供与を求められることに警戒。交渉は難航し、合意への見通しは立っていないのが実情です。
共通だが差異ある責任 1992年の地球サミットで採択された「リオ宣言」で初めて示された概念で、国連気候変動枠組み条約の基本原則となっています。地球温暖化の責任は世界各国に共通しますが、今日の温室効果ガスの大部分は先進国が過去に排出したものであることから、先進国と開発途上国の責任に差異をつけることをうたっています。
問われる先進国の責任・・途上国77カ国提案に注目
【ワルシャワ=浅田信幸】当地で開かれている国連気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)で、いわゆる先進国と途上国との「共通だが差異ある責任」原則の実践的な問題で対立が続く中、ブラジルをはじめとする途上国77カ国グループの提案が注目されています。温室効果ガスの累積排出量を「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が算出するというものです。
地球の気温上昇を産業革命前から2度以下に抑える必要性は国際的な合意になっています。そのために温室効果ガスの許容累積排出量も、二酸化炭素(CO2)換算で3兆トン弱に抑える必要のあること、そして2011年までにすでにその3分の2が排出され、残る許容排出量は1兆トンに満たないことが、IPCCの9月の報告書で明らかにされました。
さらにこの19日には、今年の排出量が360億トンに達するとの予測も出されました。このままでは、あと30年もたたないうちに、許容排出量を突破する可能性があります。
ブラジルなどの提起は、実行されれば、どの国が地球温暖化の原因であるCO2を最も排出してきたのかを明らかにすることになります。
同提案は「手続き上の問題」から、今回のCOPでは議題にのせられませんでした。しかし、19日から始まった閣僚級会合でブラジルのカルバリョ交渉代表は今後も提起し続けることを宣言。「2015年に釣り合いのとれた合意を望むのであれば、歴史的責任の問題を遠ざけるわけにはいかない」と強調しました。
温室効果ガスの排出削減で前向きな欧州連合(EU)はまだしも、後ろ向き姿勢が見え見えの米国や日本、オーストラリアやカナダといった先進国の文字通り「歴史的な責任」が問われています。