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「核のごみ」処分地 10万年隔離可能か(下)・・地震・地下水 安定遠く

土井和巳さん

 旧動力炉・核燃料開発事業団(現・日本原子力研究開発機構)の元主任研究員・土井和巳氏は、「放射性廃棄物を長期的に処分するには、安定した地域であることが必要です。さらに地下水が廃棄物に接触するようではいけません」と指摘します。

 ガラス固化体は、地下水に接触することを遅らせるため、厚さ20センチの金属と吸水性が高い粘土で覆われ埋設されます。放射能が地下水に漏れれば、地上へ流出する危険性が大幅に増大します。

5万回以上

 日本は、火山や地震が活発に起きる変動帯にあります。

 過去100年に日本列島とその近海では、マグニチュード(M)7級以上の地震は50回以上発生。この発生頻度は10万年間では5万回以上になります。活断層は全国に確認されていますが、断層が見つかっていない所でも大きな地震が起きています。

 日本は降水量が多く、新しい地質が多いことから、地下水が豊富です。地震は、断層の延長・分岐などにより核のごみや地下施設が破損するほか、地下水に影響する可能性があります。岩盤の破砕による新たな地下水経路の形成や岩盤のゆがみによる地下水流の変化などが考えられます。

 NUMOの資料では300メートル以深の地下の特徴を「地下水の流れが1年間に数ミリメートル以下と非常に遅い」としています。

地層処分の地下施設のイメージ=原子力発電環境整備機構パンフから

 しかし、これまで国内の多くの鉱山を見てきたという土井氏は、日本では一部の例外を除いて岩石に多くの亀裂がみられるといいます。岩石の亀裂は、岩盤の強度を低下させるだけでなく、亀裂が地下水の流動性を高めることにつながります。土井氏は「地下600メートルや700メートルといった深さでも地下水は減らない。場所によっては、じゃかじゃか流れていました」と話します。

 地下水は、ドイツの低レベル放射性廃棄物の処分場でも大きな問題となりました。岩塩鉱山だったアッセII処分場では、1960年代から地下500~750メートルに低・中レベルの放射性廃棄物の処分が行われました。80年代には地下水の流入が問題となり、2010年に閉鎖を決定しました。岩塩鉱山は比較的安定で地下水の流入が少ないとして選択されましたが、現在は、水浸しになった廃棄物や放射能に汚染された岩塩の回収が課題となっています。

手続き逆転

 高レベル放射性廃棄物の処分は海外でも困難な課題とされており、処分地の選定・建設まで至ったのは、フィンランドだけです。

 12年に日本学術会議は、核のごみの最終処分について、総量管理と暫定保管を柱に、政策の抜本的見直しの必要性を提言しました。また、原発をめぐる大局的政策についての合意形成に十分取り組まないままの、核のごみの最終処分の問題について、「手続き的に逆転している」と指摘しています。

 まずは原発ゼロを実現し、これ以上負の遺産を増やさないことが求められます。

 (おわり)

 (注)「総量管理」は、核のごみの総量またはその増加を厳格に抑え込むことで、今後の原発をどうするのかという議論が不可欠となります。「暫定保管」は、責任ある対処方法を検討し決定する時間を確保するために、回収可能性を備えた形で、安全性に厳重な配慮をしつつ保管することです。

(「しんぶん赤旗」2021年1月12日より転載)